このページではイケメン革命フェンリルのプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!
今回の「ベッドの上じゃ眠れない」は第15話後半のアバター試練プレミアストーリーになるぞ!!
プレミアストーリー「ベッドの上じゃ眠れない」
ついに始まった黒と赤の戦争。主人公の活躍もあって、初戦で勝利を収める黒の軍
連戦が続くなか、レイの計らいで二人は同室で寝泊まりをすることになります。
※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。
おいセス!? っ…ドア開かねー!何のマネだよ!?
アタシだって辛いのっ! 朝になったら鍵は開けてあげるから!! おやすみなさい!!!
な……っ
(嘘でしょ……っ?)
セスさんの足音が遠ざかり――私はフェンリルと顔を見合わせた。
(朝まで、ここで、ふたりきり!?)
あー……、なんつーか、あれだな
……タチの悪りー、イタズラだな
そ、そう、だね……
あー……どーすっかなー……
フェンリルは狭い部屋を見回しながら、乾きかけの髪を乱暴にタオルで拭いている。
何気ない仕草なのに、視線が惹きつけられてしまう。
(落ち着こう。これは事故みたいなものなんだから、変に意識しちゃダメだ……っ)
自分に言い聞かせるけれど、心臓が口から飛び出しそうだ。
とりあえず、●●●はベッドで寝ろ。俺はてきとーにやるし
えっ、適当って……?
椅子とか床とか。慣れてっから
(そんな! ゆっくり休める貴重な機会なのに)
ここ1週間近く、フェンリルは休みなしで隊を率いて行軍を続けてきた。
疲れの色はまったく見えないけれど、休める時には休んで欲しい。
ねえ、フェンリルがベッドを使って。私は椅子をくっつけて…
んなこと、お前にさせられっかよ
言葉をさえぎったフェンリルの顔には、”ありえない”と書かれている。
(フェンリル、とことん紳士だからな。――でも)
私だって、フェンリルを床や椅子で寝かせられないよ
身体、痛くなっちゃうでしょ。明日からも戦いは続くのに
気持ちは嬉しいけど、心配いらねーって。そんなヤワじゃねーしな
お前は気にせずベッド使え。そうしてもらわねーと俺が困るんだよ
フェンリルはタオルを椅子の背に引っかけ、テーブルの水差しの水をグラスに注いだ。
同じ部屋で寝泊まりするってだけでもお前に悪りーのに、これ以上ヤな思いさせられるか
話は終わりと言いたげに、フェンリルが顔を背けてグラスを傾ける。
(嫌な思いって……、なんで、そんなふうに思うの?)
嫌じゃないよ、全然……っ
っ……
(あっ、つい……)
ごく、と、水がフェンリルの喉を通り過ぎる音が、やけにくっきりと響く。
耳の先まで熱くなって、私は視線を落とした。
…あー、そうなの? なら、ま、よかった
(軽く、流されちゃった……。どきどきしてるのは、私だけなの?)
ほっとしていいはずなのに、フェンリルがあまりに平然としていて、急に悔しさが湧いてくる。
っ……じゃあ、一緒に、寝ればいいんじゃないかな? ベッド、広いし、半分ずつ使って
……さすがにそれは、まずいだろ
私は……フェンリルの相棒代理をレイに任されてる立場だよ
ただの、友達なんだから……気にする必要、ないよ
……ただの友達、か
フェンリルがかすかに、眉をしかめる。
たしかに、お前が”ただの友達”っつーなら、ベッドで雑魚寝すんのは、ま、フツーだな
……うん。別に、何でもない、普通のことだよ
ふーん
(本当は”何でもない”わけない。どきどきして変になりそうだ)
(でも、フェンリルが床や椅子で寝ることになるのだけは避けたいし……)
“何でもない”なら、問題ねーか。半分、ベッド借りるわ
どうぞどうぞ……? ほんと、気にせず寝るから、私
そ? じゃ、俺もそうする
(フェンリル、珍しく不機嫌……)
(なんだか意地の張り合いみたいになっちゃったけど……あとに退けないよ)
緊張を必死に押し隠し、ベッドの片側に身体を寄せて横になる。
(とにかく眠ろう……!)
目をつむりかけた時、ベッドの反対側が、ぎし、と軋んだ。
(っ……やっぱり、意識しないのは、無理)
恐る恐る振り返ると、フェンリルがベッドの端に腰を下ろしていた。
……フェンリルは、まだ寝ないの
ん、まあ……もう少ししたら寝るわ
フェンリルは私に背中を向け、窓の外を見るともなく見ている。
ガラス越しに、レモン色の半月がぽっかりと浮かんでいた。
(こんなに近くに、フェンリルがいる)
(朝までずっと、一緒にいられる)
緊張はするけれど、やっぱり嬉しい。
好きな人のそばにいられるのは、どうしたって嬉しい。
もうすぐ逢えなくなるとわかっているから――今の時間が愛おしい。
……フェンリル。こっち、向いて
……ん、どした?
笑ってる顔、見たい
っ……
いっつも見てんだろ?
見てるけど。フェンリルの真似
……ったく
フェンリルがごろんと横になって、私の方へ身体を向け頬杖をつく。
困ったように笑いながら、ブランケットをふわりと私にかけてくれた。
これで満足?
うん、満足
……そりゃ何よりだわ
フェンリルの手が伸びてきて、シーツに広がる私の髪をひと筋すくいあげた。
(あ……)
……綺麗、だな
(っ……)
いつもよりワントーン低い声に、耳をくすぐられる。
引き寄せられるように、私も手を伸ばして、フェンリルの髪にそっと触れた。
…………
……フェンリルの髪は、まだちょっと、濡れてるね
……てきとーに、拭いたからな
髪に絡めた私の手を、フェンリルが掴む。
指先が触れ合い、一瞬お互いにためらって――
どちらからともなく、指を絡め合った。
……ねえ、フェンリル
ん……?
フェンリル……
…………
フェンリル。……フェンリル
“好き”とは言えないから、名前をただ呼ぶ。
名前を呼ぶたび、胸が甘く、苦く、焦げていく。
●●●
……うん
――…●●●
横になったまま、見つめ合い、沈黙が下りてきた。
(これ以上は何も、言えないなあ)
(言葉で伝えられることが、残ってない)
この恋は先には進めない。
それでも形にならない想いが、お互いの胸の中にある。
(フェンリルが今、こんなふうに見つめてくれてる)
(それだけで、十分。――そう、思わなきゃ)
繋いだ指先をそのままに、空いている手も、そっと伸ばす。
フェンリルがいつも私にするみたいに、フェンリルの頬に触れてみる。
…………っ
フェンリルは一瞬、身体を起こしかけたけれど、
…………
すぐにふっと力を抜いて、やがて目を閉じた。
(あったかい。気持ちいい……)
(私に触れる時、フェンリルも同じ気持ちなのかな)
(そうだったら、いいな)
痛みに似た幸せを、噛みしめる。
私は目をつむり、フェンリルがくれる温もりの中で、眠りに落ちていった。
●●●が穏やかな寝息を立て始めた直後――
フェンリルのまぶたがパッと持ちあがり、唇から深いため息がこぼれた。
あ……っぶねー……
頬に触れられたあの瞬間、あと1秒でも●●●を見つめていたら、抑制できなかった。
……セスの奴、明日ぜってーフルボッコにしてやる
●●●の気遣い無駄にしちまうけど、一緒のベッドは、さすがに拷問だわ……
●●●を起こしてしまわないよう、慎重に手を解いて身体を起こす。
……悪い。こんくらいは、許せよな?
苦しげな吐息とともに、フェンリルは●●●の前髪をかきあげて、
額にそっと、キスを落とした。
――次の満月まで、あと7日。
ぬはああああああああo(`ω´ )o 鼻血モノですわこりゃ……
最高でした!ドキドキが止まりません。これからも、フェンリルのネタバレお願いします!