このページではイケメン革命フェンリルのプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!
今回の「キスの次にすること」は第20話後半のアバター試練プレミアストーリーになるぞ!!
プレミアストーリー「キスの次にすること」
謎のローブの集団に襲われた二人は黒の軍から離れてしまい深い森の奥地へ。
そこでハールとロキと出会い、彼らに道案内をしてもらいます。
※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。
魔法使いの棲み家に泊まることになった、その夜――
(水面が光ってる……。こんな景色、見たことない)
私は少し緊張しながら服を脱ぎ捨て、爪先を水に浸した。
ほどよく冷たい透き通った水が、歩き通しで火照った足を冷やしてくれる。
“涙の池”?
そ。そーいう名前の大きな池がそばにあるんだ
夕食後、デザートの野イチゴを家のそばで摘みながら、ロキとハールさんがそんな話をしてくれた。
水浴びするにはちょうどいいよ。覗き見なんて絶対しないから、行ってくれば?
ね、ハール?
のぞ……っ、そういう言葉を、口にするものじゃない、ロキ
……まあ、安心していってくるとい。夜明け前には出発する
今のうちに、身体を休めておくことだ
(気持ちいい……。フェンリルにもあとで教えてあげよう)
フェンリルは野イチゴ摘みには参加せず、家の中で武器の手入れに熱中していた。
真剣な顔で集中していたから、水浴びに出掛けるという伝言をロキに頼んで、声はかけなかった。
無骨な手は器用に動き、丁寧な仕草で武器をピカピカに磨きあげていた。
銃を乱射して、手榴弾を放り投げるあの指先が、
時々どれほど優しく動くか、今では知っている。
(っ……なに考えてるんだろう。そろそろ上がろう)
気恥ずかしくなって水から上がり、ほとりに置いたタオルに手を伸ばした時――
ガサッ、と、すぐそばで草が踏みしだかれる音が響いた。
っ……!?
(え!? フェンリル!?)
電光石火のスピードで、タオルを身体に巻きつける。
フェンリルはワンテンポ遅れて、バッと私に背を向けた。
っ、悪い
う、ううん……っ
岩陰に駆けこんで、急いで着換える。
(び……、びっくり、した……!)
心臓がばくばく鳴っていて、どんな顔でフェンリルの前に出て行けばいいか、わからない。
岩陰からそっと顔をのぞかせ、フェンリルをうかがう。
フェンリルは居たたまれなさそうな顔で、池のほとりであぐらをかいている。
あの、フェンリルは、なんでここに……?
……ロキに、いい場所があるから水浴びしてこいって言われて。お前は?
わ、私も、同じ……
やりやがったな、ロキの奴……
(私たち、イタズラに引っかかっちゃったってこと?)
ええっと……変なもの見せちゃって、ごめん!
んだよ、それ。なんでお前が謝るんだ
苦笑して、フェンリルが手招きする。
悪かった。謝るから、そばに来いよ
(フェンリルは、あんまり動揺してない……)
どしたー? 来いってば
……うん
複雑な気持ちで歩み寄ると、手首をそっと掴まれた。
そのまま、フェンリルの膝に乗せられる。
っ、なんで……?
冷え防止ってことで
(……何、その理由)
納得いかないけれど、優しく抱きしめられたら、不満なんて消しとんだ。
(あれ……?)
背中越しに伝わるフェンリルの鼓動は、私と同じくらい乱れている。
……フェンリルは、ポーカーフェイスがうますぎる
何のことだかわかんねーなー
なんで、はぐらかすの
首をねじって、フェンリルを睨む。
お、お前の怒った顔、レアだなー。いいもん見たわ
(もう……)
はい、怖い顔タイム終了―。ニコニコしてみ?
……嫌って言ったら?
死ぬ気で笑かす
にっと笑って、フェンリルが私の頬を手のひらでつつむ。
親指が私の口角を、ふに、と上へ持ち上げた。
(ダメだ。怒ったままでいられない)
笑みがこぼれるのと同時に、甘い吐息が漏れた。
俺の圧勝だな
フェンリルの余裕の表情は、私を腹立たしくさせるけれど、同時に……
身体の奥の部分を、甘く蕩けさせ、崩しにかかる。
(フェンリルには、敵わない)
足、平気?
え……?
1日歩いて疲れただろ。無理させて、悪かった
(やっぱり、気にしててくれたんだ)
私こそ、へなちょこで、すみません。もっと身体を鍛えるよ
いや、今くらいでちょうどいいんじゃねーの?
お前がムキムキだったら、俺の膝に乗せらんねーし
そ……そう、だね
(はぐらかしたくせに、急に甘やかすなんて……)
(どきどきして、おかしくなる。ますます、好きになる)
フェンリルを、いつの間にか好きになった。
フェンリルも同じ想いなのだと、言葉にはしなくても、目と手と唇で、伝えてくれた。
(黒の領地に帰るまで待とうと思ってたけど、)
(今……言いたい)
フェンリル。私……フェンリルのことが、
んっ!?
頬に添えた手の親指で、唇を塞がれた。
な、何するの?
別にー?
悪戯しないで聞いて。あのね、私はフェンリルが、好、……んっ
今度は、親指が唇を押し割り、舌に触れる。
(な、なんで……?)
舌を淡い力でくすぐられ、心臓が鳴り響き、唇が濡れていく。
ぁっ……、ゃ、ら
何言ってっかわかんねー
指を引き抜き、唇をなぞりながら、フェンリルの掠れた声が響く。
っ……わたしは、フェンリルのことが、す、
き、と言えずに、唇で唇を塞がれた。
ん……っ
昨日の夜とは違う、身体ごと溶かすような甘いキスが、繰り返される。
んん……、ぁ……っ
与えらえる熱に溺れながら、混乱が深まっていく。
(なんで、言わせて、くれないの……?)
(”恋はしない”って約束を、破ることになるから?)
(でも、だったらどうして……こんなこと、するの?)
唇が離れた時には、狂おしいほど身体が火照っていた。
いつの間にかフェンリルも、余裕をなくしたように、頬を上気させている。
フェンリルは、意地悪だよ
……そーだな
……なあ。キスの次にすること、何か知ってるか?
え……
答えられないでいると、フェンリルの手が、私の背中を、つ…と撫でた。
(ぁ……っ)
びく、と肩が揺れた直後――
私はフェンリルに、きつく抱きしめられた。
(フェンリル……?)
私の耳元に、フェンリルが唇を寄せる。
何か言いたげに、唇を開きかけて……
…………
苦しげに口を閉ざし、腕を解いた。
……忘れてたわ。俺、水浴びしに来たんだった
(へ?)
●●●は先に戻って寝てろよ。あ、覗きたいってんならそれでもいいけど?
の、覗いたりしないよ……!
じゃ、またあとでな
ジャケットを脱ぎかけるフェンリルに、立ち上がって背を向ける。
(結局、はぐらかされちゃった)
(さっきのキスが、今は何も言うなって、意味だとしたら)
(私も待つよ。黒の領地に帰れるまで、黙ってる)
●●●が去るのを見送って、フェンリルはひとり、息をついた。
さっきまで●●●に触れていた手のひらを、じっと見つめる。
キスのあとにすること。それは……
きつく抱きしめて、特別な人にだけ捧げるひとつの言葉を、囁くこと。
●●●、俺も、お前が……
言えないひと言を、フェンリルは手のひらに固く、閉じ込めた。
ハールの小学生みたいな反応が好きですww