このページではイケメン戦国幸村のプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!
今回の「唇の微熱」は第二話後半の恋の試練プレミアストーリーになるぞ!!
プレミアストーリー「唇の微熱」
信長の命を助けた姫として、大名たちとの会合に同席することになった主人公
そのために、綺麗な着物や化粧をして、城下に出たところを偶然、行商幸に見つかります
※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。
幸!
私は裾を持ち上げて、市の隅で商品を広げる幸に駆け寄った。
!?
おま…っ…何だよ、その格好
(え?)
自分の格好を見下ろして、はっとする。
(あっ、着替えるの忘れてた!しかも、髪とメイクもそのままだ)
大名と会合するための豪華な装いは、市で悪目立ちしている。
店を広げていた商人達が、わらわらとそばに集まってきた。
商人1「恋人かい?ずいぶん可愛い女子(おなご)じゃねえか」
は?
えっ
商人2「こんなにめかしこんで逢いに来るとは、けなげだねえ」
っ…な、ちげーよ!
そ、そうです、そういうんじゃないですから!!
商人3「照れんなよ、ご両人!いやあ、初々しいなぁ」
(本当に違うのに…っ)
冷やかしの声がやまず、耳の先まで熱くなる。
らち明かねえ…。行くぞ、●●●
あっ…
私の手首を掴み、幸がずんずん歩きだし…
私は、ひと気のない町はずれの河辺へと連れて来られた。
ぱっと私の手を離し、幸の眉間に皺が刻まれる。
お前が妙な格好してくるせいで、不名誉な誤解受けたじゃねーか
不名誉って…、それはこっちのセリフだよ
言い返すけれど、顔熱が冷めてくれない。
(こんなことで動揺するなんて、我ながら情けない…)
で……何かあんのかよ、今日
え?
祭りか。盆踊りでも踊んのか
違うよ…っ
ならなんで、妙に着飾ってんだよ
(『妙に』って…。お世辞を言うとか、思いつきもしないんだな、幸は)
たまたま、きちんとした格好する用があっただけ
あっそ
肩をすくめたあと、幸の視線が私の足元へ注がれる。
裾、汚れてんぞ
あっ、本当だ…
地面がところどころぬかるんでいて、裾に泥が跳ねていた。
(こんな綺麗な着物を汚しちゃうんなんて…っ)
後悔しながら急いで裾を持ち上げる。
もう二度とこんな格好では出歩かない。あんまり似合ってないしね…
そうは言ってねえだろ
え…
いーんじゃねえの、たまには。似合ってなくはねえし
ほんと…?
褒められるなんて予想外で、思わず幸の顔をじっと見つめる。
だけど、こーいうのつけてると団子も食えねえな
幸が手を伸ばし、紅を引いた私の唇に親指で触れる。
っ……!?
指の腹が、無造作に紅の上を滑った。
な、なに…?
似合ってるけど、落ち着かねえ
(え……)
幸に触れられた唇が熱を持ち、心臓がとくっと跳ねる。
幸はため息をついて、背を向けてしゃがみ、私を振り向いた。
ほら
え?
乗れ。着物、これ以上汚したくねーだろ
(おんぶしてくれるってこと…?)
でも……重いよ?
だろうな
っ…わかってるなら、おんぶするなんて言わないで
冗談だ、バカ。いいから乗れ
表通りまで我慢しろ
……ありがと
たくましい幸の肩に、おずおずと手をかける。
幸は軽々と私を背負って立ち上がり、歩き出す。
あー…その、なんだ。こんなとこに連れ出して悪かった
あ……ううん、気にしないで
それ以上汚さねえように、うろついてないで帰れ
うん、そうする
(結局、何しに来たんだっけ、私)
信長様の国獲りで、多くの民が横暴な大名から救われるのを俺は見てきた
国とは民だと、あの方は真に理解している
戦で得た領地を平定し、民に自由な暮らしをさせ、栄えさせる…それが信長様のやり方だ
あのあと、自分の『当たり前』の感覚が信じられなくなりそうで、不安だったのに…
幸の顔を見た瞬間から、いつもの私に戻っていた。
(やなやつだけど、いいやつだな、幸は)
くるくるうずを巻く幸のつむじを、じっと見つめる。
(今度会う時は、普通の着物を着ていよう)
(この年になっておんぶされるなんて恥ずかしいし、申し訳ないし…)
(幸の隣を歩けないのは、ちょっと、つまらないし)
幸の背中に揺られながら、私はそんなことを考えていた。
つっけんどんな幸ですが、素直におんぶしてくれたり、感想を言ってくれるのは嬉しいですよね♪