がろはる_喜

このページではイケメン戦国秀吉のプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!

ぱいせん_喜

今回の「あらかじめ失われた恋」第八話中盤の恋の試練プレミアストーリーになるぞ!!

プレミアストーリー「あらかじめ失われた恋」

敵軍との戦が激化する中、佐助に、この間に現代に帰ろう、と告げられる主人公。

これ以上、別れが辛くなる前に離れたほうがいい、と考えた主人公は最後に秀吉に会いに行きます。

※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。


織田軍が安土を発つ前夜、私は風呂敷ひとつを抱え、秀吉さんの御殿を訪ねた。
秀吉さんは驚きながらも、私を部屋へと通してくれた。

豊臣秀吉

どうしたんだ、こんな時間に

イケメン戦国_主人公

急にごめんね。少しだけ時間をもらえるかな

豊臣秀吉

それは全然構わないけど、遅くにひとりで出歩くな
用があるなら、俺をお前の部屋に呼びつければいいだろ

イケメン戦国_主人公

そんな厚かましいことできないよ

イケメン戦国_主人公

(過保護なのは、出陣前夜でも変わらないんだな)

いつも通りのやさしさが、今日はいっそう胸に滲みる。

豊臣秀吉

で、何だ用って

イケメン戦国_主人公

これを秀吉さんに渡しに来たの

風呂敷包みをほどき、縫い上げた着物を取り出す。
翡翠(ひすい)色の生地が、行燈(あんどん)の明かりの中に美しく映える。

豊臣秀吉

この着物は・・・

イケメン戦国_主人公

たくさんお世話になったお礼。ささやかだけど、受け取って

イケメン戦国_主人公

(気に入ってくれるかな・・・)

秀吉さんは驚きがさめない顔で着物を手に取り、じっと眺めた。

豊臣秀吉

少し前に、一緒に反物屋へ行った時に買ってた布か・・・?

イケメン戦国_主人公

うん。秀吉さんに似合いそうだと思って

豊臣秀吉

ーすごくいい品だ。見栄えもいいし、着心地もよさそうだし、何より仕事が丁寧だ
・・・短期間でこれを仕立てるために、無理しただろ

イケメン戦国_主人公

ううん、全然

豊臣秀吉

嘘つくな。目元、赤くなってるぞ

イケメン戦国_主人公

(あ・・・)

伸びてきた指先が、目のふちをなぞる。
触られたそばから、ぞくりと肌が甘く震えた。

豊臣秀吉

夜更かしは体に悪いだろ?戌の刻には布団に入れ

イケメン戦国_主人公

(戌の刻ってたしか、夜の八時前後だよね・・・?)

イケメン戦国_主人公

子どもじゃあるまいし、そんなに早く眠れないよ

豊臣秀吉

寝不足で目を赤くしてる奴に、口答えする権利はない

イケメン戦国_主人公

・・・わかった。今日は早く寝る

別れの前夜だからか、小言さえ耳に甘い。

豊臣秀吉

-ありがとな。大事に着る

イケメン戦国_主人公

大事には、しなくていいよ

豊臣秀吉

え?

イケメン戦国_主人公

明日出陣するときに、着ていって。身動きしやすいように仕立てたから

豊臣秀吉

甲冑と一緒に着込めって言いたいのか?

イケメン戦国_主人公

うん、そういうこと

豊臣秀吉

できるか、そんなこと。お前が縫い上げた着物を無造作に扱えない

イケメン戦国_主人公

汚れても破れてもいいの。この着物は・・・
秀吉さんを少しでも守るために、作ったものだから

豊臣秀吉

守るため・・・?

イケメン戦国_主人公

そう。秀吉さんが一番大変な時に着てて欲しいの

イケメン戦国_主人公

(どんなにそばにいたくても、一緒にいられないから)

イケメン戦国_主人公

・・・お願い

思いを込めて、秀吉さんをじっと見つめる。

豊臣秀吉

ーわかった。納得いかないけど、俺には、お前の気持ちが一番大事だ

イケメン戦国_主人公

(よかった・・・)

イケメン戦国_主人公

寸法が合ってるか確かめたいから、一度着てもらってもいい?
戦に行くときと同じ格好をして調整させて欲しいの。私も着替えを手伝うから

豊臣秀吉

了解。じゃ、頼む

秀吉さんの脱いだ上着を、私は背中からそっと引き取った。
部屋に用意された甲冑を秀吉さんが身に着けるのを、黙って手伝う。

イケメン戦国_主人公

(一緒にいられるのは、今日が最後・・・)

広い肩に着物をまとわせながら、ある記憶が脳裏によみがえった。


戦国娘

秀吉様は、戦場で喜んで命を捨てるような男でしょ?だから・・・
本気になったらその分、帰りを待つ時間に耐えられなくなるってこと
あなたも気を付けてね。あーんな困った男に本気になったら大変よ?


イケメン戦国_主人公

(あの時の忠告、無駄にしちゃったな。帰りを待つ辛さが、今ならよくわかる)
(でも私は・・・待つこともできない)
(待つどころか、秀吉さんが戦から戻ってくる頃、この時代にいないかもしれない)

イケメン戦国_主人公

私は・・・文は書かない

豊臣秀吉

え?

イケメン戦国_主人公

文を出しても、返事が来るまで待てないから・・・
戦が終わったら、秀吉さんに一番に逢いにいくよ
もし待ってても帰ってこなかったら、逢えるまで探しに行く

豊臣秀吉

・・・っ
ったく、無茶なこと言うなよ

イケメン戦国_主人公

(実現できもしないこと、言っちゃったな・・・・)

けれど衝動に任せて告げた言葉は、あの日、あの瞬間の、精一杯の本心だった。
仕上げに帯を締めながら、私はきゅっと唇を嚙んだ。

イケメン戦国_主人公

・・・どう?

豊臣秀吉

ぴったりだ。着心地も抜群だ

イケメン戦国_主人公

よかった。思った通り、似合ってて、かっこいい

豊臣秀吉

こら、褒めても何も出ないぞ

イケメン戦国_主人公

褒めてない、本心だよ

豊臣秀吉

あのな・・・。どこでそんな口の利き方覚えてきたんだ?

イケメン戦国_主人公

うーん、秀吉さんからじゃないかな?

豊臣秀吉

まったく、口が減らないな

笑って、秀吉さんが私の頬をふにっとつまむ。
私も笑おうとしたけれど、上手くいかなかった。

イケメン戦国_主人公

秀吉、さん・・・

豊臣秀吉

ん・・・?

イケメン戦国_主人公

(頑張ってねとか、気をつけてとか・・・何を言っても場違いな気がする)
(秀吉さんは命を捨てる覚悟で、戦に行こうとしてるから)

視界が潤む中、触れられた大きな手のひらに自分の手をそっと重ねる。

イケメン戦国_主人公

ずっと、この手に触れられる距離に、いられたらいいのに・・・

豊臣秀吉

●●●・・・

イケメン戦国_主人公

(ずっと、この手を離さずいられたら、どんなに・・・)

熱いものがせり上がってきて喉を塞ぎ、思考が途切れる。
秀吉さんの手のひらが、優しく私の頬を包み込んだ。

豊臣秀吉

ー俺だって、そう思ってる

イケメン戦国_主人公

・・・嘘つき

イケメン戦国_主人公

(信長様の方が、大事なくせに)

秀吉さんは否定を口にせず、ただ、私をそっと抱き締めた。
淡い香りに包まれて、くらくらする。

イケメン戦国_主人公

(秀吉さん・・・)

広い胸板も、背中に回されたたくましい腕も、まとう香りも、甘ったるい声も、少し高い体温も・・・
この人の全部が、好きで好きで堪らなくて、そう思ったら涙がでた。

イケメン戦国_主人公

(あ・・・)

そっと顎を掬いあげられ、大好きな形の瞳が、間近に迫る。

豊臣秀吉

また、目、赤くなるぞ

イケメン戦国_主人公

・・・別に、いいよ、そんなの

豊臣秀吉

俺が、よくない
残していくことが苦しい相手なんて、初めてなんだ

イケメン戦国_主人公

(え・・・?)

イケメン戦国_主人公

どういう、こと・・・?

豊臣秀吉

・・・何でもない。今のは、忘れろ。

イケメン戦国_主人公

っ・・・忘れられるわけないよ。どういう意味か、ちゃんと言って

豊臣秀吉

いいから忘れろ

イケメン戦国_主人公

嫌!絶対、絶対忘れない・・・!だって私は秀吉さんのことが、

豊臣秀吉

ああもう

イケメン戦国_主人公

!?ん・・・っ

私の抗議は、口づけにさえぎられた。

イケメン戦国_主人公

(秀吉、さん・・・?)

疑問符が頭を飛び交って、すぐにそれどころじゃなくなる。

イケメン戦国_主人公

んん、ぁ・・・っ

唇をやんわりと割り、舌先が忍び込む。
とっさに逃げようとした私の舌を絡めとり、少しずつ、溶かしていく。

イケメン戦国_主人公

(秀吉さんも、私のこと・・・?)

言葉の代わりに、唇から直接想いを注がれている気がした。

イケメン戦国_主人公

(・・・私も、好き)
(あなたが、大好き・・・)

口づけに応えながら、身体が溶け出しそうで、立っているのもやっとだった。

イケメン戦国_主人公

(時間が、止まればいいのに)

唇が離れたあと、荒い呼吸が整うまで、私達は黙ったまま動けずにいた。
見つめ合いながら、背中に回された腕が少しずつ緩み、切なさが胸に忍び込む。

豊臣秀吉

・・・今のも、忘れろ

イケメン戦国_主人公

・・・・・・・っ

少し苦しげな甘い声で囁かれ、また涙が溢れた。

イケメン戦国_主人公

(ずるい)
(どうして、言葉では・・・なんにも言ってくれないの?)

忘れろなんて言うくせに、秀吉さんの指先は、優しく私の涙を拭う。

イケメン戦国_主人公

(でも、私に秀吉さんの気持ちを問い詰める資格はない。黙っていなくなるつもりなんだから)
(私だってあなたに言えない。明日いなくなるのに、好きなんて言えない)
(安土を去って、現代に帰るから。きっと、この先二度と逢えないから・・・)

豊臣秀吉

ー・・・もう帰れ

イケメン戦国_主人公

ー・・・もう帰る

声を出したのは同時だった。
どちらからともなく腕を解き、静かにそばを離れー
何も言わないことで、私達はさっきのキスを、お互いになかったことにした。

豊臣秀吉

駕籠(かご)で送らせる。支度するから少し待ってろ

イケメン戦国_主人公

うん、ありがと・・・

側近を呼びに、秀吉さんが廊下へ出ていく。
好きな人が視界に映らなくなったことが、もう寂しくて苦しい。

イケメン戦国_主人公

(・・・キスがこんなに上手だとか、別れ際に、教えないでよ)
(もう、これじゃ、忘れられない)

始まったばかりのこの恋は、あらかじめ終わることが決められていた。
それでも、恋をしなければよかったとは、思えない。
ずっとずっと、身体の底で、秀吉さんへの想いが燃えていて欲しかった。


がろはる_悲

儚い…

ぱいせん_泣

切ない…