このページではイケメン革命シリウスのプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!
今回の「ときめきの警鐘」は第4話後半のアバター試練プレミアストーリーになるぞ!!
プレミアストーリー「ときめきの警鐘」
偶然、現代の世界から魔法の国に迷い込んでしまった主人公は、魔法を跳ね返す自分の力のせいで命を狙われることに怯えます
そんな主人公の気持ちを癒してくれる大人の男性シリウス。ある日、彼の非番の日に主人公は付き合うよう言われます。
※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。
(いい天気……。雲がひとつもない空を、ようやく見慣れてきたな)
兵舎の外へ一歩踏み出し、できたてみたいな新鮮な空気を吸いこむ。
約束の時間は8時。今はまだ7時45分。
待ち合わせ相手のシリウスさんは、まだ来ていない。
【回想】
お詫びはいらねえが、せっかくだから明日の午前中空けといてもらうか
え……?
非番なんだ。よければ付き合え
昨夜、誘いをかけてもらって、嬉しくなった。けれど――
(いいのかな。せっかくの半休を一緒に過ごす相手が私で)
(シリウスさんにとっては迷子の面倒を見てるようなものだろうから、休みにならないんじゃ……)
早起きだな、お嬢ちゃん
あ……っ、おはようございます
おはよう
(仕事じゃない時はラフな格好なんだ……)
着心地良さそうなシンプルなシャツは、シリウスさんによく似合っている。
ついて来な。ちょうど見ごろだ
(見ごろ……?)
シリウスさんのあとについて、花壇に向かう。
青い花が一輪、やわらかな朝陽を浴び、凛りん)として咲いていた。
綺麗……
昨日つぼみがふくらんでたから、今朝には咲くと踏んでたんだ
シリウスさんが育てたんですか?
ああ
訓練中も花の水やりしてましたよね。ガーデニングが趣味なんですか?
ガーデニングなんて立派なもんじゃねえ。余ったスペースで適当に育ててるだけだ
(適当には思えないけどな。どの花も丁寧にお世話されてるように見える)
この青い花、なんていう名前ですか?
アイリスだ
(アイリス……。名前の響きまで綺麗だ。覚えておこう)
花びらは、心の奥まで沁みいるような深い青だ。
(こんな気分になるのは、なんだか久しぶり)
職場の菓子店のカウンターに、花瓶を飾る瞬間や、
ささやかな花束を自宅に飾る時と同じ、浮きたつような心地がする。
気に入ったみたいだな
はい! この花、見たことはあったけど、名前まで知りませんでした
元いた世界にもきっと咲いてると思うので、覚えておきます
そうか。こっちの世界でも、珍しい花ってわけじゃない
気温の変化にも強いし、乾いた土地でも手をかければ咲く
つぼみがいくつかついてるの、わかるか? これが交互に咲いていく
花言葉がやたら多いのも特徴だ
どんなものがあるんですか?
有名なのはあなたを愛すとかだな
そ、そうですか……
(花言葉を教えてくれてるだけなのに、なんか、ドキッとした)
動揺に気づかれないように、急いで笑みを浮かべる。
花言葉まで知ってるなんて、お花屋さん顔負けですね
普通の花屋は、花言葉なんて知らねえ奴の方が多いぞ
えっ、そうなんですか?
ああ。咲く季節、色、種類、扱い方、そういう知識の方が重要だ
(博識だな、シリウスさんって)
少し土が乾いてるな
指で砂に触れたあと、シリウスさんは花壇を離れ、ジョウロに水を満たして戻ってきた。
絶妙な力加減で、草花に細やかなシャワーを降らせていく
(目がいつもより優しい気がする)
植物を育てるの、すごくお好きなんですね
まあまあな
(まあまあってレベルじゃないと思うけどなぁ)
あんたは、甘いもんだったな
はい
じゃ、●●●。これから土いじりを手伝ってもらうぞ。で、腹を空かせろ
(え?)
シリウスさんとふたりで、花壇の手入れを終えた後――
お待ちどう
ダイニングテーブルにつく私の前に、シリウスさんがお皿をコトンと置いた。
(わぁ! どうしよう、嬉しい!!)
真っ白なお皿の上に、ふかふかの厚いパンケーキが3段重ねになっていて、
ブルーベリーソースのかかったバニラアイスクリームが、たっぷり添えられている。
シリウスさん、すごいです! 匂いだけで美味しいです!
おいおい、食ってもらわねえと困るんだが
もちろんいただきます!!
そりゃどうも
ナイフとフォークを用意してくれながら、シリウスさんの唇から苦笑が漏れる。
(絵になるな……。エプロンも似合う軍人さんなんて、なかなかいないと思う)
味に飽きたら、チョコレートソースとバナナもあるから言いな
ありがとうございます!
パンケーキを切り崩して口へ運ぶ。
バターのしょっぱさとバニラの甘さが絶妙で、思わずうなってしまった。
んー、最高……
焼き立てだからな
シリウスさんはふたり分のコーヒーを用意してから、向かいの椅子に座った。
湯気の上がるカップを片手に持ち、本を開く。
(あれ、パンケーキ、シリウスさんの分がない)
シリウスさんは食べないんですか……?
甘いもんは作る専門でな。気にせず食いな
(甘いの、苦手なのかな)
読書するシリウスさんを見つめつつ、パンケーキをもぐもぐ食べる。
ページをめくる音が、かそやかに響く。
あの……私、邪魔じゃないですか?
邪魔だったら誘ってない
……だったら、いいですけど
キッチンの窓から差し込む光が、明るさを増していく。
パンケーキはほかほかで、コーヒーは香ばしい。
(何の心配もなくて、面倒な用事もない、完璧な休日って感じがする)
こんなにのんびりしてて、いいのかな……
思わず呟きが漏れた時――
いいに決まってる
読み掛けの本に指を挟んで顔を上げ、シリウスさんが目を細めた。
帰るまでの間、長い休暇中とでも思ってればいい
1ヶ月のんびりしていきな
……はい
深く頷いたら、頭をくしゃっと撫でられた。
再び読書に戻ったシリウスさんを見つめながら、舌の上で、アイスクリームが溶けていく。
(どうしてだろう)
(どうしてシリウスさんの声は、心の奥の奥まで、届くんだろう)
(私をこんなに、安心させてくれるんだろう)
穏やかな時間が流れる中、なぜか心臓の音が速くなって……
ピンチを告げる鐘みたいだと、そんなことを思った。
――…次の満月まで、あと25日。
なんでもない日常の一幕ですが、こういうのもいいですね♪