このページではイケメン革命エドガーのプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!
今回の「失楽園」は第20話後半のアバター試練プレミアストーリーになるぞ!!
プレミアストーリー「失楽園」
赤と黒の軍の開戦が控える中、エドガーの金庫から秘密を知ることになる主人公。
エドガーを信じることのできなくなった主人公は黒の軍に逃げますが、エドガーの叔父であるクローディアスに誘拐されてしまいます。そこで出会ったエドガーとの一時。
※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。
っ……う……ぁ……
傷の手当てが終わった途端、喉から、どうしようもなく嗚咽が漏れた。
ほんのわずかな安堵と、巨大な恐怖に、心が丸呑みにされていく。
っ、●●●……
いつだって穏やかに微笑んでいた美しい顔が、苦しげに歪む。
次の瞬間、私はエドガーの腕の中にいた。
こんなこと言う資格、俺には微塵もないってわかってます。でも……っ
涙を拭いても、いいですか……?
懇願するように、エドガーが私を見つめている。
(いいか、悪いかなんて……っ)
そんなの……私にも、わからないよ……!
もつれて絡まったまま感情が、一気に吹き出す。
(だってあなたは私のことを騙して、私のことを助けた人だから)
……それなら、せめて
(あ……っ)
頭をそっと引き寄せられ、固い胸板に頬が埋まる。
純白の布地が私の涙を吸っていく。
(心臓の音が、聞こえる)
(あったかい血が、流れてる音……)
……あなたは、本当に嘘つきだね
え……
手も、胸も、どこもかしこも……やっぱり、あったかいじゃない
…………
この人の冷たい手に触れた朝を、よく覚えている。
【回想】
……貴女の手は、温かいですね
エドガーだって同じでしょう。こうしてたらすぐに温まるよ
貴女の温もりが残っている間だけですよ
俺の手は、いつだって冷たい
ちっとも、冷たくなんかない
あなたが何を企んでいようと、いくつ嘘をついていようと、何が本心だろうと、関係なしに……
あなたという人には、温かい血が流れてる
挑むように、エドガーを見つめる。
返ってきたのは、泣き出しそうな笑顔だった。
たとえ、そうだとしても
俺が今までしてきたことを知れば貴女は……
俺に涙を拭かせるどころか、視界に入ることさえ許しがたいと思うでしょう
(え……?)
微笑みの中に、エドガーの生の感情が溢れ出している。
それは、痛ましいまでの愛情と哀切だ。
(人は、一朝一夕でこんな哀しい目にはならない)
(いったい何が、エドガーをここまで追い込んだの……?)
ふと、ルカとの会話が頭をよぎった。
【回想】
『ブライト家の一族は、人を愛することを禁じられているようなものなんです』……そう言ってた
赤のジャックは代々、特殊な任務を課せられてるらしい。そのせいで……
当たり前に人を愛することは、叶わないんだって
教えて、エドガー。”赤のジャック”が、何者なのか
すっと身を引き、エドガーが目を伏せる。
赤のジャックとは……赤の軍の影そのもの
謀略と暗殺を生業(なりわい)とする者の名前です
(暗殺……!?)
100年も前のことです。ブライト家の祖先はある大罪を犯しました
赤のジャックだった彼は、赤のキングとクイーンに反逆を企てたのです
ですが革命はあえなく失敗。キングとクイーンは裁判で彼の罪を追求し、その首を刎ねました
処罰は本人のみに留まらず、ブライト家の一族に及び……
キングとクイーンの命令で、次代ジャックは彼らと密約を結びました
罪の償いとして、ブライト家は代々赤の軍の暗部を担う、と
(100年も前から……)
おわかりでしょう? 俺という人間は、生まれた時から罪人なんです
赤のジャックは、血塗られた手で妻を抱き、子に同じ道を歩ませる……
もうほとんど、悪魔そのものですよね
(だからエドガーは、『自分には人を愛することが許されない』って思ったの?)
(愛したいのに、愛せなかったの……?)
エドガーは笑っているけれど、心が悲鳴を上げているのが、はっきり聞こえる。
(でも……)
ランスロット様やヨナが、そんな酷いことをエドガーにさせるとは、私には思えないよ……
仰る通りです。あのふたりに代替わりして以降、謀略はともかく、暗殺の命はなくなりました
赤のジャック暗躍の最盛期は、先代キング・クイーン・ジャックの時代です
(みんなのお父さんの世代……?)
俺が7歳の時、父が病死し、叔父が27歳で赤のジャックを継ぎました
叔父からジャックとして必要な教育を受け、13歳になる頃から実務を手伝うようになりました
(実務って、つまり……)
意味を察して、血の気が引いた。
13の子どもになんてことを……!
理解して頂けないのは重々承知です。ですが叔父は、ジャックの使命を果たしたまでです
エドガーは小首を傾げ、困ったように微笑むばかりだ。
俺はね、よかったんです別に。人間、親は選べませんし
“謀略と暗殺”は、幼少期から教え込まれた、なんてことない”普通の仕事”ですし
嘘をつこうが騙そうが殺そうが、そんなのちっとも気にしなかった
何も、感じなかった
……貴女に出逢うまでは
(私……?)
……どうしてでしょうね。貴女には触れられないって、思ったんです
100年かけて血に染め上げられたこの手では、とても
危うい微笑みを浮かべ、エドガーは目を伏せた。
その視線の先にある、膝の上で握られた拳が、かすかに震えている。
(この人が私にしたことは、簡単には許せない)
(何が嘘で何が真実だったのか、わからないこともまだ山積みだ)
(でも)
……手を貸して
え……
返事を待たずにエドガーの両手を握り、引き寄せる。
びくっと強張ったその手のひらを、自分の両手で包み込んだ。
っ、何をするんですか
いいから!
駄目です、離して下さい!
嫌!
俺だって嫌です、だって……!
貴女を……っ、汚してしまう
(なんてこと考えるの)
堪らずに、手の中の指先を引き寄せて、キスをした。
っ……駄目ですって、言ってるじゃないですか
こんなことをされたら俺は、今まで必死に抑え込んできたのに……
貴女の全てを、汚したくなる
怯えたように揺れる翡翠色の目を、真っすぐに見つめ返す。
私は、汚れたりしない。あなたを許せたわけじゃないけど……
それでも今のあなたには、あなたを温める誰かが必要なの
だから……私が、温める
…………
貴女は……ほんとに、困った人です
包み込んだ指先から、力が抜けていく。
あなたが何も感じてなかったなんて、それこそ嘘だよ
だって、こんなに震えてる
…………っ
(謀略を教え込まれたエドガーが、誰より手酷く騙した相手は……エドガー自身だ)
(行き場のない愛を誤魔化して、何も感じないと嘘をついて、ずっとずっと自分を騙し続けてきたんだ)
生まれつき楽園を追われた優しい悪魔は、
これほどの重い罰を下されるには、あまりに美しい手をしていた。
言葉もないまま私は、エドガーの手のひらを胸に抱き続けた。
生まれから汚れている、なんて辛すぎる。。。エドガーに幸せになってほしいです。。。