このページではイケメン革命ロキのプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!
今回の「君の魔法」は第4話後半のアバター試練プレミアストーリーになるぞ!!
プレミアストーリー「君の魔法」
黒の兵舎で次の満月まで保護されることが決まった主人公でしたが、ひょんなことからロキに気に入られ、デートの約束を取り付けられます。
すっかり日が暮れてしまったデートのあと、ロキに帰るのを渋られるのでした。
※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。
――夜が近づく森の中、デート終わりにロキは
(もう少し一緒にいて
……俺が手を離すまで、目を閉じたままでいてね
私の視界を手で覆ったロキは、そのままゆっくりと歩き出す。
えっ、このまま移動するの?
大丈夫、俺がちゃんと足元見てるから
(そんなこと言われても、怖いって……!)
暗闇の中、ロキの声と体温だけを頼りに森を進む。
あとちょっと。……ストップ、ここでいいよ
足を止めると、夜を迎え冷たくなった風が頬を撫でた。
じゃあ、目を開けてね
っ、うん
頷くと目元を覆っていたロキの手が離れて……
(わ……!)
目の前に広がっていたのは、大きな池だった。
陽が沈み輝きを強めた魔宝石が水面に揺らいで、幻想的な空間を作り上げている。
綺麗……!
でしょ? 涙の池っていって、普段はあんまり人が寄りつかない場所なんだけど
この景色をアリスに見せたかったんだー
(それで、もう少し一緒にいたいって言ってくれたんだ)
胸に優しい火が灯ったように、じわりとあたたかい気持ちが広がる。
連れてきてくれてありがとう、ロキ
ロキといると、素敵なことでいっぱいだな
素敵なことって?
美味しいものを食べたり、色んな人と仲良くなったり、綺麗な景色を見たり……
今、私か楽しくクレイドルで暮らしているのはロキのおかげだよ
クレイドルでの日々を楽しめばいいと言ってくれたのはロキだった。
実際に楽しい毎日にしてくれたのも、ロキだ。
(馴染めるのか不安に思ったりもしたけれど、そんなのとっくにどこかに行っちゃった)
翻弄しながらも前を向かせてくれた彼に、溢れるまま笑顔を見せる。
……可愛い笑顔
っ、え?
私の頬をふにっとつまむ指は、いつもの悪戯よりも優しい気がした。
そんな顔されると、もっと喜ばせたくなっちゃうな
ロキ……?
ロキの目が怪しく細められて、腰に腕が回された。
こっちに来て、アリス
【魔法の光が輝くアニメーション】
っ、きゃ……
一瞬、強い風が足元に吹きスカートの裾が舞う。
反射的に目をつむり、ロキのコートをぎゅっと掴んだ。
アリス、目を開けてよ
え……?
しがみついたまま瞼を開くと、さっきまで地面があった足の下に水面が広がっていた。
(私、水の上に浮いてる……!?)
これ、魔法!? ここにある魔宝石を使ったの?
……ううん。ここにある魔宝石は、加工前で扱いにくいしねー
(じゃあ、こっそり魔宝石を持っていたのかな)
コートのポケットにでも、商売用の魔宝石を忍ばせていたのかもしれない。
ロキは私から離れて、軽やかに池の真ん中に踊り出す。
ちょ、ちょっと待って! ロキ、離さないで
大丈夫だよ、歩いてみて?
(ほ、本当に……?)
おそるおそる、一歩踏み出してみる。
爪先を降ろすと静かに波紋が広がり、私の身体は沈むことなく水の上を歩いていた。
すごい! 魔法って、こんなこともできるんだ
そうだよ。このくらいのことなら、簡単にね
ロキは水の上を跳ねるように歩き、自由気ままに散歩する。
碧く幻想的な世界を支配するかのように、大きく手を広げながら。
(あれ……ロキの目、いつもと違う色に見える)
ロキ。ロキの目って……
ねえ、アリス
池の真ん中まで追いつくと、ロキは私の言葉を遮るように振り返った。
……好きになってくれた?
(っ、え……?
……魔法のこと。俺ね、アリスがクレイドルを好きになってくれたらいいなって思ってたんだ
魔法も不思議の国になくてはならないものだから、好きになって欲しい
色んな人も、景色も、好きなものに囲まれれば笑顔になれるよ
そうすれば、毎日楽しく過ごせるでしょ?
(っ、そんな風に思っていてくれたんだ)
甘く、胸の奥が締め付けられる。
あたたかい気持ちとは違う、名前のわからない淡い感情が滲んだ。
……本当にありがとう、ロキ
一歩、水の上でロキに近付く。
ねえ、何かお礼をさせて欲しいな
すると、ロキはにやりと口角を上げて…――
お礼なら、これで十分
っ……!?
柔らかい唇が、ちゅっと音を立てて頬に触れた。
かすかな体温に頬が熱くなり、思わず身を引くとばしゃっと水面が波打った。
っ、びっくりした……!
そんなに?
逃がさないとでも言うように、ロキは再び私の腰を抱き寄せる。
手を繋ぐのも、こうやってくっつくのもいいのに……ほっぺにキスはだめなの?
それとこれとは、別!
ここは、はっきりさせておかないと……!)
びっくりするし……その、恥ずかしいから
キスは禁止。いい?
躾けるように言い聞かせると、ロキは口を尖らせながらも頷いた。
……はーい。いいよ、アリスに嫌われたくないからね
本当はもっと、触りたいけど
悪戯っこのような微笑みと、伏せられた瞳の色気が合い混ざる。
(……雨の中で見た、出会った時の顔に似てる)
(無邪気なくせに……寂しそう)
碧い世界の中に光る赤い瞳だけが、出会った時とは違っていた。
じゃあ、帰ろっか。そろそろ本当に、黒の軍のみんなに怒られそう
ふわりと地面に降り立つと、ロキは再び私の手を握る。
手は、繋いでもいいんだよね?
甘えるように尋ねるロキの瞳は、またいつもの色に戻っていた。
……いいよ
頷くと、嬉しそうにロキは手に込める力を強めて歩き出す。
(ロキはどうして……キスをしたりしたんだろう)
しっかりと絡んだ指に視線を落とす。
ロキが人懐っこいことも、からかうように悪戯する癖があることも、もうわかってる。
(ロキの考えていることは、わからないけど)
(あまり深い意味はないんだよね、きっと)
恥ずかしかったり、困ってしまうこともあるけれど、
じゃれてくる猫のような彼の行動は憎めなかった。
……森を抜けても、私たちは手を繋いだまま黒の兵舎へと帰った。
また明日ね、アリス
うん。また明日
手を振って、黒の軍のみんなと美味しい夕食が待つ兵舎へと駆けていく。
ふと風が吹き、舞う髪に誘われるように振り返る。
ロキはまだ、門の前で私を見送ってくれていた。
(早く、明日にならないかな)
(ロキとデートして、少しずつクレイドルのことを知って、好きになる)
(……この平穏な時間が、続くといい)
明るい笑顔につられて、私はなんの疑いもなくそう思っていた。
――次の満月が昇るまでの、短いけれど長い時間。
こうしてずっと、ロキのそばにいるのだと。
優しいけれども、まだまだ、何か裏がありそうなロキ。完全に信用ができない自分がいます!!