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イケメン戦国 | 上杉謙信 プレミアストーリー②「見えない糸」

このページではイケメン戦国謙信のプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!

今回の「見えない糸」第六話中盤の恋の試練プレミアストーリーになるぞ!!

プレミアストーリー「見えない糸」

謙信の歪んだ愛により、主人公は牢に閉じ込められてしまいます。

なにもすることが出来ない主人公はつまらない様子。謙信はなんとかして主人公を楽しませようとします。

※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。


しばし待て。必ずお前を喜ばせてみせる

決然と牢の前をあとにした謙信様は、ほどなくして戻ってきた。

待たせたな

いいえ、お帰りなさ…
え!?

顔をあげた瞬間、信じられない光景を目の当たりにする。

(ウサギがいっぱい…)

謙信様の後ろを追いかけるように、たくさんのウサギがついてきていた。

可愛い……! 謙信様が飼っていらっしゃるんですか?

飼ってなどいない。こいつらが勝手に棲みついているだけだ

ウサギたちは立ち止まった謙信様の足元を囲み、すりすりと身体を押しつける。

(すごく懐かれてる……)
いいなあ…

今、そちらへ送り込んでやる

わあ、触らせていただけるんですか?

喜ばせてやると言っただろう
お前を牢から出すことはできないが、こやつらを牢に入れることはできるからな

謙信様は牢を開け、ウサギたちに手で合図を送る。

さあ、入れ

号令をかけられたウサギたちはぴょんぴょんと牢に入り、
一番最後に謙信様が入ってきて、牢の戸を閉じた。

っ……謙信様も入られるんですか?

不満か

不満なんかないです…っ
(むしろ、嬉しい)

久しぶりに柵を隔てず見る謙信様の姿に、胸がきゅっと締め付けられた。

お前ら、道を空けろ

謙信様はウサギたちを踏まないよう気を配りながら、私のそばに歩み寄る。

何を突っ立っている。座れ

あ、はい

謙信様と並んで腰かけると、たちまちその周りにウサギが押し寄せた。

(わわ……っ)

ウサギたちにぐいぐいと鼻先を押しつけられ、自然と謙信様との距離が縮まる。

(こんなに近くに謙信様が……)
(何だか、急に落ち着かなくなってきた)

どうした、ウサギはお前の好みではなかったのか?
先ほどまでは目を輝かせていたと思ったのだが

いいえ……っ、すごく好きです。本当に可愛いですね
(そうだよ、こんなにたくさんのウサギに触れられる機会めったにないし)

勝手に浮つき始めた心を知らんぷりすることにした。

ならば良し

謙信様は満足げな顔になって、ウサギを一羽抱き上げる。

遠慮せず、触れてみろ

謙信様は抱いたウサギを私の膝の上に下ろした。

わ、ありがとうございます
(ふわふわだ……!)

真っ白なウサギをぎゅっと抱きしめたい衝動に駆られながら、怯えさせないようにそっと撫でる。

一体、何羽いるんですか?

数えたことはない。もしかすると、まだいるかもしれん

そんなにたくさん……! 一羽ずつ名前はつけてないんですか?

最初に俺についてきた三羽だけには名付けている
お前の膝の上にいるのが『梅』、残りの二匹は『松』と『竹』という名だ

名前を呼ばれた梅が飛び上がって、謙信様の膝に突進する。

(あ、行っちゃった)

さらに、群れの中から二羽のウサギが我先にと謙信様によじ登り始める。

そっちの子たちが、松と竹ですね

ああ、そうだ

謙信様は私に答えてから、膝の上で丸くなった梅に視線を落とす。

梅、何を勝手に持ち場を離れている。お前は●●●の膝の上に置いてやっただろう

いいんです。この子たちは、よほど謙信様のことが好きなんですね
(ウサギに囲まれる謙信様って……何だか微笑ましい)
(こういうの、ギャップ萌えっていうのかな?)

勝手に懐いてついて回る、呆れた奴らだ

素っ気ない返事をしながらも、謙信様は指先で梅たちの耳をくすぐっている。

(優しい手つき……)
(謙信様も、実はちゃんとウサギたちを可愛がってるんだな)

意外な一面に、胸がきゅんと疼いた。
梅たちが羨ましいのか、他のウサギたちも謙信様の膝に乗ろうと夢中になっている。

落ち着きのない連中だ。これでは●●●が満足に触れられないではないか

じゃあ、私も謙信様の膝の上にいる子たちを、一緒に撫でさせてもらっていいですか?

ああ。好きにしろ

ありがとうございます

そっとウサギに手を伸ばし、絹のような毛並みを撫でる。

このさわり心地、癒やされる……

身を乗り出すようにして、その感触に夢中になる。
ふと気がつくと、すぐそばに謙信様の整った顔があった。

(っ…思ったより接近してたみたい。夢中になりすぎた…)

じっと見つめられ、肌が火照りだす。

どうしてそんなに私を見るんですか……?

そんなこと、決まっているだろう

謙信様は大真面目な顔をして答える。

お前が笑うのを待っているのだ
……ちなみに今は、惜しいところまでいっていた

っ…何ですか、それ…
(本気で仰ってるの……?)

女子どもの好む小動物をあてがう戦術は間違っていないことが、これで証明されたな
さあ、●●●。俺に構わず、ウサギを愛でるが良い

(戦術……?)
(よくわからないけど……どうやら、ものすごく真剣なのは確かみたい)

軍神と畏れられる謙信様が私を笑わせるために本気になるなんて、信じられないような話だ。

(でも……何でだろう。それが、すごく嬉しい)

胸の奥がくすぐったくて、足元がふわふわする。

(変な感じ……)
ふふ……っ

……!

思わず笑ってしまった私を見て、謙信様が目をみはる。
その顔にまた、どうしようもなく胸が弾んだ。

(謙信様の気持ちがわからなくなってずっと不安だったけど…)
(こんなに真剣に私のことを考えてくれてるっていうのは、わかった)

ようやく笑ったな

……はい
でも、謙信様だって笑ってますよ


(越後に連れて来られてから……私も、謙信様のこんなに晴れやかな笑顔は見てなかった)
(私が笑っただけで、そんなに嬉しそうにしてくれるなんて)[/char]

明日からは、毎日ウサギを連れてきてやる

それは楽しみです。だけど、時々触らせてもらうだけでもいいんです
私が今笑ったのは、ただウサギが可愛かったからじゃありません

ではなぜだ。教えろ

それは……内緒です

何?

(ちゃんと説明するのは、何となく照れくさい)
(それに……謙信様にだって、私のことでちょっとくらい悩んでほしいから)

……引っ掛かるが、お前の機嫌が直ったのであれば今は良しとしてやる

腑に落ちない顔をする謙信様の身体に、ウサギたちが甘えるように鼻先を押しつける。

何だ、俺は考え中だぞ

きっと、謙信様の手が止まっちゃったから『撫でてほしい』って催促してるんですよ

仕方のない奴らだ

謙信様の手を頭に置かれた一羽のウサギが、うっとりとした顔になる。

(気持ちよさそう)
(……そういえば、ついこの前、私もあの手のひらで頭に触れられた)
(この牢の柵越しに、謙信様が手を伸ばして……)

にわかに記憶が呼び覚まされ、その時の熱まで肌に再現される。

●●●……?

わっ……何でもありません

笑っていたかと思うと、急にそわそわしだすーー落ち着きのない女だ

謙信様は空いていた片手を、無造作に私の頭に乗せ……

(ん……っ)

これ以上ないくらい、優しく髪を撫でられた。

お前はどことなくウサギに似ているな
ーーこうして撫でると、少し震えているところも

っ…私は、ウサギみたいに可愛くないです…
(頭を撫でられただけで、こんな気持ちになるのはどうして……?)

またひとつ、もどかしい疑問を植えつけられる。
身をよじって謙信様の指先から逃れようとするけれどーー

動くな

(あっ)

ただ一言、命じられただけで……私の身体は見えない糸に縛られる。

俺が良いと言うまで、そのままでいろ

(……熱い)

抗えない熱に身体中を侵されて……私はただ、謙信様の指先に震えていた。


ウサギを武器に主人公のご機嫌をとる謙信様ww

そんなヤンデレ謙信ですが、主導権はやっぱり握っています。