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イケメン戦国 | 豊臣秀吉プレミアストーリー③「あらかじめ失われた恋」

このページではイケメン戦国秀吉のプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!

今回の「あらかじめ失われた恋」第八話中盤の恋の試練プレミアストーリーになるぞ!!

プレミアストーリー「あらかじめ失われた恋」

敵軍との戦が激化する中、佐助に、この間に現代に帰ろう、と告げられる主人公。

これ以上、別れが辛くなる前に離れたほうがいい、と考えた主人公は最後に秀吉に会いに行きます。

※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。


織田軍が安土を発つ前夜、私は風呂敷ひとつを抱え、秀吉さんの御殿を訪ねた。
秀吉さんは驚きながらも、私を部屋へと通してくれた。

どうしたんだ、こんな時間に

急にごめんね。少しだけ時間をもらえるかな

それは全然構わないけど、遅くにひとりで出歩くな
用があるなら、俺をお前の部屋に呼びつければいいだろ

そんな厚かましいことできないよ

(過保護なのは、出陣前夜でも変わらないんだな)

いつも通りのやさしさが、今日はいっそう胸に滲みる。

で、何だ用って

これを秀吉さんに渡しに来たの

風呂敷包みをほどき、縫い上げた着物を取り出す。
翡翠(ひすい)色の生地が、行燈(あんどん)の明かりの中に美しく映える。

この着物は・・・

たくさんお世話になったお礼。ささやかだけど、受け取って

(気に入ってくれるかな・・・)

秀吉さんは驚きがさめない顔で着物を手に取り、じっと眺めた。

少し前に、一緒に反物屋へ行った時に買ってた布か・・・?

うん。秀吉さんに似合いそうだと思って

ーすごくいい品だ。見栄えもいいし、着心地もよさそうだし、何より仕事が丁寧だ
・・・短期間でこれを仕立てるために、無理しただろ

ううん、全然

嘘つくな。目元、赤くなってるぞ

(あ・・・)

伸びてきた指先が、目のふちをなぞる。
触られたそばから、ぞくりと肌が甘く震えた。

夜更かしは体に悪いだろ?戌の刻には布団に入れ

(戌の刻ってたしか、夜の八時前後だよね・・・?)

子どもじゃあるまいし、そんなに早く眠れないよ

寝不足で目を赤くしてる奴に、口答えする権利はない

・・・わかった。今日は早く寝る

別れの前夜だからか、小言さえ耳に甘い。

-ありがとな。大事に着る

大事には、しなくていいよ

え?

明日出陣するときに、着ていって。身動きしやすいように仕立てたから

甲冑と一緒に着込めって言いたいのか?

うん、そういうこと

できるか、そんなこと。お前が縫い上げた着物を無造作に扱えない

汚れても破れてもいいの。この着物は・・・
秀吉さんを少しでも守るために、作ったものだから

守るため・・・?

そう。秀吉さんが一番大変な時に着てて欲しいの

(どんなにそばにいたくても、一緒にいられないから)

・・・お願い

思いを込めて、秀吉さんをじっと見つめる。

ーわかった。納得いかないけど、俺には、お前の気持ちが一番大事だ

(よかった・・・)

寸法が合ってるか確かめたいから、一度着てもらってもいい?
戦に行くときと同じ格好をして調整させて欲しいの。私も着替えを手伝うから

了解。じゃ、頼む

秀吉さんの脱いだ上着を、私は背中からそっと引き取った。
部屋に用意された甲冑を秀吉さんが身に着けるのを、黙って手伝う。

(一緒にいられるのは、今日が最後・・・)

広い肩に着物をまとわせながら、ある記憶が脳裏によみがえった。


秀吉様は、戦場で喜んで命を捨てるような男でしょ?だから・・・
本気になったらその分、帰りを待つ時間に耐えられなくなるってこと
あなたも気を付けてね。あーんな困った男に本気になったら大変よ?


(あの時の忠告、無駄にしちゃったな。帰りを待つ辛さが、今ならよくわかる)
(でも私は・・・待つこともできない)
(待つどころか、秀吉さんが戦から戻ってくる頃、この時代にいないかもしれない)

私は・・・文は書かない

え?

文を出しても、返事が来るまで待てないから・・・
戦が終わったら、秀吉さんに一番に逢いにいくよ
もし待ってても帰ってこなかったら、逢えるまで探しに行く

・・・っ
ったく、無茶なこと言うなよ

(実現できもしないこと、言っちゃったな・・・・)

けれど衝動に任せて告げた言葉は、あの日、あの瞬間の、精一杯の本心だった。
仕上げに帯を締めながら、私はきゅっと唇を嚙んだ。

・・・どう?

ぴったりだ。着心地も抜群だ

よかった。思った通り、似合ってて、かっこいい

こら、褒めても何も出ないぞ

褒めてない、本心だよ

あのな・・・。どこでそんな口の利き方覚えてきたんだ?

うーん、秀吉さんからじゃないかな?

まったく、口が減らないな

笑って、秀吉さんが私の頬をふにっとつまむ。
私も笑おうとしたけれど、上手くいかなかった。

秀吉、さん・・・

ん・・・?

(頑張ってねとか、気をつけてとか・・・何を言っても場違いな気がする)
(秀吉さんは命を捨てる覚悟で、戦に行こうとしてるから)

視界が潤む中、触れられた大きな手のひらに自分の手をそっと重ねる。

ずっと、この手に触れられる距離に、いられたらいいのに・・・

●●●・・・

(ずっと、この手を離さずいられたら、どんなに・・・)

熱いものがせり上がってきて喉を塞ぎ、思考が途切れる。
秀吉さんの手のひらが、優しく私の頬を包み込んだ。

ー俺だって、そう思ってる

・・・嘘つき

(信長様の方が、大事なくせに)

秀吉さんは否定を口にせず、ただ、私をそっと抱き締めた。
淡い香りに包まれて、くらくらする。

(秀吉さん・・・)

広い胸板も、背中に回されたたくましい腕も、まとう香りも、甘ったるい声も、少し高い体温も・・・
この人の全部が、好きで好きで堪らなくて、そう思ったら涙がでた。

(あ・・・)

そっと顎を掬いあげられ、大好きな形の瞳が、間近に迫る。

また、目、赤くなるぞ

・・・別に、いいよ、そんなの

俺が、よくない
残していくことが苦しい相手なんて、初めてなんだ

(え・・・?)

どういう、こと・・・?

・・・何でもない。今のは、忘れろ。

っ・・・忘れられるわけないよ。どういう意味か、ちゃんと言って

いいから忘れろ

嫌!絶対、絶対忘れない・・・!だって私は秀吉さんのことが、

ああもう

!?ん・・・っ

私の抗議は、口づけにさえぎられた。

(秀吉、さん・・・?)

疑問符が頭を飛び交って、すぐにそれどころじゃなくなる。

んん、ぁ・・・っ

唇をやんわりと割り、舌先が忍び込む。
とっさに逃げようとした私の舌を絡めとり、少しずつ、溶かしていく。

(秀吉さんも、私のこと・・・?)

言葉の代わりに、唇から直接想いを注がれている気がした。

(・・・私も、好き)
(あなたが、大好き・・・)

口づけに応えながら、身体が溶け出しそうで、立っているのもやっとだった。

(時間が、止まればいいのに)

唇が離れたあと、荒い呼吸が整うまで、私達は黙ったまま動けずにいた。
見つめ合いながら、背中に回された腕が少しずつ緩み、切なさが胸に忍び込む。

・・・今のも、忘れろ

・・・・・・・っ

少し苦しげな甘い声で囁かれ、また涙が溢れた。

(ずるい)
(どうして、言葉では・・・なんにも言ってくれないの?)

忘れろなんて言うくせに、秀吉さんの指先は、優しく私の涙を拭う。

(でも、私に秀吉さんの気持ちを問い詰める資格はない。黙っていなくなるつもりなんだから)
(私だってあなたに言えない。明日いなくなるのに、好きなんて言えない)
(安土を去って、現代に帰るから。きっと、この先二度と逢えないから・・・)

ー・・・もう帰れ

ー・・・もう帰る

声を出したのは同時だった。
どちらからともなく腕を解き、静かにそばを離れー
何も言わないことで、私達はさっきのキスを、お互いになかったことにした。

駕籠(かご)で送らせる。支度するから少し待ってろ

うん、ありがと・・・

側近を呼びに、秀吉さんが廊下へ出ていく。
好きな人が視界に映らなくなったことが、もう寂しくて苦しい。

(・・・キスがこんなに上手だとか、別れ際に、教えないでよ)
(もう、これじゃ、忘れられない)

始まったばかりのこの恋は、あらかじめ終わることが決められていた。
それでも、恋をしなければよかったとは、思えない。
ずっとずっと、身体の底で、秀吉さんへの想いが燃えていて欲しかった。


儚い…

切ない…