このページではイケメン革命シリウスのプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!
今回の「好きになった方が負け」は第25話後半のアバター試練プレミアストーリーになるぞ!!
プレミアストーリー「好きになった方が負け」
クレイドルに来てから30日後、主人公はシリウスや他のみんなのためにロンドンに帰ることになります。
それから数ヶ月後、全てに決着がついたシリウスがなんと自ら、ロンドンへ迎えに来たのでした。
※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。
数ヶ月ぶりに、私は不思議の国へと戻ってきた。
今度はひとりじゃなく、大好きな人とふたり、手を繋いで。
(わぁ、懐かしい!)
深夜のセントラル地区は、魔宝石の光でキラキラと明るい。
帰って来た――そう思ったら駆け出したくなった。
●●●
早足になる私の手を、シリウスさんが握った。
(あ……)
指と指を絡められ、どきっと心臓が音を立てる。
あの、心配しなくても、走って転んだりしませんよ……?
もう、迷子じゃないですし
知ってる
じゃあ、どうして手を……
どうしてだと思う?
(っ、切り返しが、いちいちずるい)
ドキドキしているのを隠したくて、目を伏せる。
わかりません
それは残念
口の端を片側だけ上げ、シリウスさんは笑ってみせた。
さて、と。行くか
あれ? 兵舎の方角はこっちじゃ……
足を用意してないんだ。あんたをすんなり連れ帰れると思ってなかったからな
真夜中じゃ馬車も捕まらねえから、宿にでも泊まってくぞ
そっか、わかりました
(…………ん? 泊まる!?)
意味を察して、心臓が口から飛び出しそうになった。
スタスタと歩き出すシリウスさんは、あまりにも平然としていて、
動揺をさとられないように、私は必死に表情を真似した。
春の夜風は、柔らかく暖かく、頬の熱を冷ましてはくれなかった。
宿に落ち着き、シャワーを浴びたあと……
シリウスさん、あのっ
ん?
ベッド、ひとつしか、ないんですが……!
ひとつでいいだろ
(真顔でそういうこと言う!?)
宿の寝室の入り口で、私は立ちすくんでしまった。
シリウスさんは何食わぬ顔で、ジャケットをハンガーにかけてクローゼットにしまっている。
(大事なこと、忘れてた……!)
(シリウスさんと私は、人としての経験値に、圧倒的な差があるってことを)
(どうしよう! まずは椅子に座るべき? それともベッドの端っこ……!?)
真っ白なシーツを直視できず、頭を抱えていると――
●●●
は、はい!
シリウスさんは先にベッドに腰をおろし、ぽんぽん、と自分の膝を叩いてみせる。
(おいでって、ことだよね……)
ぎくしゃくと歩み寄り、シリウスさんの正面で立ち止まる。
膝に乗っかる勇気が出ずにいると、シリウスさんがそっけなく呟いた。
今、右手と右足、一緒に出てたぞ
(人の気も知らないで!)
悔しくなって、シリウスさんの膝には座らず、隣に腰かけた。
シリウスさんは平然としすぎです
ま、大人なんでな
なんだか前までと変わらない気がします。私ばっかり、好きみたい……
そいつは光栄だ
(ほんとにそう思ってるのかな)
ちらっと横顔をうかがう。
やっぱりシリウスさんは落ち着き払っていて、いつになく真顔を保っている。
(……ん? 真顔?)
もしかして、シリウスさんも、緊張してます……?
……どうしてそう思う
だって、あまりにも平然としてるから、それが逆に不自然というか……
……気のせいだろ
そっけなく告げて、シリウスさんはそっぽを向いた。
(もしかして、図星……?)
(シリウスさんなりに、照れてくれてるのかな?)
肩にそっと寄りかかってみる。
シリウスさんは明後日の方角を向いたまま、私の肩を抱き寄せた。
(あったかい)
伝わる体温が、私のもやもやを一瞬で吹き飛ばした。
(シリウスさんが動揺してても、してなくても、もう、どっちだっていいや)
(触れられる距離にいられるんだから、なんだっていい)
(好きになった私の負けだ)
手を伸ばして、シリウスさんにぎゅっとくっつく。
……
やっと、さわれる……
甘えたがりの、本領発揮だな
おかしがるような声がして、髪を指で梳かれた。
ぞくぞくと、甘い痺れが地肌を伝い、首筋へと駆けおりる。
ひゃっ……
(っ、変な声、でちゃった)
急いで身体を離すけれど、
駄目だ
あ……っ
抱き寄せられ、膝の上に向かい合わせに乗せられる。
私の目線より少し下から、シリウスさんが私を見据えた。
言ったろ。二度と離したくないって
(そ、そんなこと言われても……っ)
ストレートに告げられたら、ますます心臓の音がうるさくなる。
で、でも、あんまり、されると、おかしな声が出ますし……っ
もっと聞きたいから、こうしてる
ぁ……っ
スカート越しにゆるく撫でられ、脚にびくっと力が入った。
待、って……
待たない
ん……っ、ぁ、あ……
ブラウスのボタンが、簡単に開かれていく。
暴いた素肌を吸う唇は、優しいけれど、容赦がない。
(力が、抜けてく……)
強張りが解ける代わりに、身体は溶けだして、
声にならない声が止まらなくなる。
……●●●
ゆっくりと押し倒され、シーツに髪が波打った。
(シリウスさん……)
手を伸ばして、わずかに上気した頬に触れる。
……本当に私、ずっと、あなたが好きだったんです
あなたが欲しくて……あなたに、欲しいって、思われたかった
……っ
何かに耐えるように、シリウスさんの顔が歪む。
シリウスさんは……?
俺も……
ずっと、触れてみたかった。あんたの全部に
唇が重なり、キスが深くなる。
(こんなに嬉しいことって、ない)
(死んじゃうくらい、嬉しい)
私の肌を探る手が次第に荒々しくなって、何度も何度も背中が反り返った。
ゃ、あ……っ
離れていた時間を埋めるように、きつく抱きすくめられ、
シリウスさんとの距離がなくなる。
(あなたが、好き。大好き……)
幸福におぼれ、広い背中にすがり、私は想いを体温に変えた。
――あまり眠れないまま、シリウスさんに腕枕され、朝を迎えた。
ふわぁ、と小さくあくびが漏れる。
……少し寝るか
いいえ、眠くないです
(ほんとはちょっと眠いけど、眠るのがもったいない)
心地良い気だるさの中、いつまでもシリウスさんを見つめていたい。
……笑わないで下さいね?
ん?
シリウスさんがぎゅっと抱きしめてくれて、私……死んでもいいって、思いました
それは、俺が困る
こんなんじゃ抱き足りない
額にキスされて、肩がびくっと震えた。
っ、そういうこと、ぽんぽん言うの禁止です!
顔を正視できなくなり、急いで背を向けて、ブランケットの中で足をバタバタさせる。
(なんでこんなに、格好いいのっ?)
(目、ぱっちり覚めちゃったよ)
ため息がこぼれた時、シリウスさんは背中から私を抱きしめ、囁いた。
……あんたを送りだした日に、言いたくても言えなかった言葉があるんだ
もう時効だし、今、言わせろ
(え……?)
振り向いた私の目に、優しい笑みが映る。
行くな。ここにいろ
あんたが隣にいることが、当たり前になっちまったんでな
●●●。あんたが俺の、幸せだ
(っ……)
涙で、何も見えなくなった。
いくつもの感情がせめぎ合い、わけがわからない。
わかるのは、私の大好きな人が、指先で優しく雫を拭ってくれていることだけだ。
私自身の、不思議の国の物語は、終わりを告げたけれど――
ふたりで紡ぐ新しい物語が今、始まろうとしていた。
最後の最後で二人の物語がスタートしました!!よかったね♪主人公!!