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イケメン革命 | シリウス=オズワルドプレミアストーリー④「玉砕覚悟のキス」

このページではイケメン革命シリウスのプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!

今回の「玉砕覚悟のキス」第20話後半のアバター試練プレミアストーリーになるぞ!!

プレミアストーリー「玉砕覚悟のキス」

ランスロットに連れ去られる主人公。それを追うシリウス。なんとか主人公を取り戻すことに成功します。

その後、シリウスはランスロットとの過去や自分が戦う理由を初めて主人公に話します。

※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。


時間を巻き戻して、7年前のシリウスさんを、抱きしめられたらいいのに

●●●……

頬を押し付けたシャツの襟元に、涙が沁みていく。

あんた、よく泣くな

だって私は、あなたのことが……

(あなたがほんとに、好きだから)

シリウスさんの首を抱き寄せながら、想いが溢れかけた時、
長い指先が、私の顎をそっと持ち上げ…――

目、腫れちまうぞ

もう片方の手で、目のふちをなぞった。

(あったかい手……)

間近で見つめ合い、周囲の音が遠のいていく。
瞳の奥に、優しいだけじゃない熱のようなものがちらついている気がした。

(どうして、黙ってるんですか)
(今、何を、考えてるんですか)

問いかけたいのに、鼓動がうるさくて言葉にならない。

シリウス、さん……?

……ああ

名前を呼んだ私に、シリウスさんは曖昧な相槌を返した。
温もりが離れ、瞳も手のひらも遠ざかった。

帰るか。みんな、探してる頃だ

……そう、ですね

気付けば、太陽が暗い森を次第に照らし始めている。
私たちは言葉少なに、見捨てられた廃墟をあとにした。

脚を痛めた馬をひきながら、どうにか午後にセントラル地区の端にたどり着き――
街で馬車を借り、一路、黒の兵舎を目指す。

シリウスさんと隣り合って座り、車輪が回る音に黙って聞き入る。

(明るくなったら、なんだか何も話せなくなっちゃった……)

この腕でシリウスさんを抱き寄せたのが、夢だったみたいだ。
街に着く頃には暖かくなったので、ジャケットはシリウスさんに返してしまった。

(近づけたと思ったのに、また遠くなったような気がする)

膝の上で丸めた両手に、視線を落としていると……

疲れさせたな

窓の桟(さん)に肘を置いて頬杖をつき、シリウスさんが苦笑いする。

オッサンの無駄話に付き合わせて悪かった、●●●

そんなことないです……!

シリウスさんのことを知れて、私は嬉しかったです
それに、シリウスさんはオッサンじゃないです

シリウスさんみたいな人は『格好良い大人の男』って呼ぶんです

変わってるな、あんた

一般的な見解です

じゃ、世の中どうかしてる

シリウスさんは窓の方を向き、おかしそうに笑い出した。

(もう、本気で言ってるのに!)

もどかしさに駆られて、私はシリウスさんの頬を両手で挟み振り向かせた。

!?

シリウスさんは格好良いんです! たとえ本人でも、私の意見を否定はさせませんから

……なんだ、やけに必死だな

必死にもなりますよ。だって

好き、と言いかけて、慌てて唇を結ぶ。

(っ、危ない、言っちゃうところだった。困らせるから隠しとくって決めたのに)
(想いが届かなくても好きでいるって……決めたのに)

シリウスさんは続きを促しはせず、黙ってされるがままになっている。

ええっと……すみません、こんなことして

謝るようなことでもねえだろ
あんたの気が済むなら、何でも、好きにしな

(え……っ?)

どういう、意味ですか

疲れてるんだろ? あんたが落ち着くなら、俺の頬だろうが何だろうが貸し出すさ
昨日は俺があんたに胸を貸してもらった。借りは返す主義なんでな

(ああ、そういうこと……。シリウスさんって義理堅いんだな。)
(今ならちょっとだけ……甘えても、いいのかな)

頬に添えていた手を、おずおずと、たくましい肩へ滑らせる。

遠慮はいらねえ。どーんと来い

冗談めかして、シリウスさんが両手を広げてみせた。

っ、じゃあ、せっかくなので……。いきます!

(えい!)

思い切って、シリウスさんの片手を、両手で包みぎゅっと握る。

……

……ったく、どこまでも可愛いな、あんた

困ったように笑い、シリウスさんは空いた手を私の腰に回すと――

(わ……!?)

私を身体ごと引き寄せ、膝に横向きに乗せてしまった。

えっ、あの……! 私、重いですよ!? それに外から誰かが見たら……

はいはい、いいからくっついとけ。昨日あんたが俺にしたことと似たようなもんだろ

今だけだ

(今だけ……)

たったひと言で、恥ずかしさや礼儀作法が頭の隅に追いやられて、
私は与えられる温もりに、両手で必死にすがりついた。

ん、それでいい

シリウスさんの唇が、私の髪にかすかに触れている。
大好きな人の声が、じかに私の肌を伝って身体じゅうに響く。

あんたがこんなに甘えたがりだったとは、知らなかった

……甘えたがりじゃないです。相手が、シリウスさんだからです

そうか。慕ってもらえて光栄だ

(慕うなんて、可愛らしい感情じゃない)
(私の気持ちを知ったら、シリウスさんはこの手を、解いてしまうのかな)

切なくて、胸が痛み始めた。

(想いが届かなくてもいい、そう思ってた。でも、やっぱり……)

――…あなたが、欲しい。
言えない言葉を呑み込み、シリウスさんをじっと見つめる。

……どうした?

想いがはちきれそうで、考えるより先に言葉が溢れた。

シリウスさん、少しだけ、目、つむってください

……どうして

どうしてもです……! さっき、何でも好きにしなって言ったじゃないですか

無条件とは言ってない

怖いことも痛いこともしないですから!

別に、あんたにそんなことされるとは思ってねえが……

お願いです。今だけ、ですから……!

…………

シリウスさんはふと黙り、静かに目を閉ざした。

(シリウスさん、無理やりこんなこと……ごめんなさい)
(あと少しの恋ならもう、終わりが今でもいい。だから……思い出をください)

かたく目をつむり、勢いのままに唇を近づけた。
けれど――

(…………あれ?)

……

私の唇が触れたのは、シリウスさんの口の端から少し離れた場所だった。

(キス、失敗、しちゃった……)

今のは……?

あの、ええっと、今のは……っ
親愛の、アレです……!

焦りを押し隠し、苦し紛れに言い切る。

なるほど……。そうくるか
なら、俺からもひとつだ

え? っ……ひゃ!

当然のように額にキスされ、肩がビクッと震えてしまった。

(えええっ……?)

シリウスさん、今のは……っ?

親愛のアレの、お返しのアレだ

よ、予告してください!

しただろ

もっと、ちゃんとですっ

わかった、次からは気をつける

笑いながら、シリウスさんは私の頭を自分の胸に抱き寄せた。

(次が、あるの……?)

胸板に頬を埋めながら、安堵が胸に広がっていく。
叶わない想いなら、いっそあと先考えず、ぶつかって砕けようとしたけれど――
ほんの少しだけ、この恋の寿命が延びてしまった。


うはあああ、めっちゃドキドキする!!!