このページではイケメン革命シリウスのプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!
今回の「Emergency!」は第10話後半のアバター試練プレミアストーリーになるぞ!!
プレミアストーリー「Emergency!」
黒と赤の会合が破綻した上に旧知の仲であるランスロットとハールの争いを止めることができなかったシリウス。
開戦を前に戦いの立案など忙しそうにしているシリウスのために、レイたちは息抜きのために主人公にデートをしてくるよう依頼します。
※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。
妙なことに付き合わせて悪いな、お嬢ちゃん
いえ、任務頑張ります!
シリウスさんと私は、レイから任務を授かって街までやってきた。
名目上は、セントラル地区の動向の視察――それも、恋人同士のフリをしろというオマケ付き。
けれど出発する間際、レイが私にだけ耳打ちして明かしたことがある。
【回想】
幹部全員から●●●に頼みがある。開戦の前に、シリウスに息抜きさせたくてさ
あいつに思い切り、お前の世話、焼かせてやってくんない?
(『世話を焼かせてやって』なんて変なお願いされたの、初めてだ)
(でも、レイたちが心配してるのはよくわかった。今日はシリウスさんにのんびりしてもらおう!)
このお店、お菓子も飲み物も美味しいですね。シリウスさん、コーヒーおかわりしませんか?
ああ。あんたはケーキもおかわりするといい。何十個でも
そんなに大食らいじゃありません!もうお腹いっぱいですし……
本音は?
……あと2つくらいなら
素直で何より。メニューもらうか
シリウスさんはウェイターからメニューを受け取ると、私の方へ向けて差し出してくれた。
(うーん、どれにしよう。今食べたチーズスフレ、美味しかったな)
(バタフライケーキとアップルクランブルが気になる。でもマロンパイも捨てがたい)
(……ん?)
メニュー越しに、シリウスさんと目が合った。
コーヒーカップを傾け、おかしそうに目を細めている。
なんでしょう?
別に。楽しそうだと思ってな
すみません、ひとりではしゃいでしまって……
それで正解だろ。デートだしな
(デート……。シリウスさんの渋い声で呟かれると、単語の破壊力がすごいな)
ドキドキして、変な汗がでてきた。
(っ、話題、変えよう)
まあ、デートといっても、ほんとの目的は視察ですけどね
視察ってのは口実なんだろ
え?
あんたはクソガキどもに、俺を息抜きさせて来いと頼まれた。違うか?
気付いてたんですか!?
当然。三十路なめんな
伸ばされた手に、こつん、と額を小突かれる。
触れられたのは一瞬なのに、そこから熱が広がった。
で? お嬢ちゃん、ケーキの追加は、どれとどれとどれとどれを頼むんだ
っ、4つも頼みませんよ! 3つで十分です
さっきより1つ増えたな
私が言い訳するより早く、シリウスさんはウェイターに声をかけた。
(シリウスさんの中で、私ってどれだけ食いしんぼうなイメージなんだろう)
釈然としないけれど、しばらくして運ばれてきたケーキが全部絶品で、不満は引っ込んだ。
美味しいです!
そりゃ何よりだ
コーヒーを片手に、シリウスさんはまた、私を見つめている。
口の片側を軽く上げるこの笑い方が好きだなと、ふと思った。
カフェを出ると、メインストリートはごった返していた。
(すごい人出。混んでるのはいつものことだけど、何かが違う)
違和感の正体はすぐにわかった。
道行く人の表情に、極端に笑みが少ないのだ。
何かあったんでしょうか……?
あるのはこれからだ
みんな物を買い込んだり、店を引き払ったりしてるんだろ。開戦の前にな
(そういうことか)
以前セスさんとショッピングを楽しんだ時の陽気さは、今はない。
様変わりした街の風景が、痛ましかった。
あんたまで引きずられることはない。ほら、行くぞ
腹ごなしに散歩だ。迷子になるなよ
は、はい
そういや元々、よその国からの迷子だったっけな、あんた
長い腕がすっと伸ばされて――
(あ……)
大きな手のひらに、指先を包まれる。
繋いどく
人混みをかきわけるようにして、私の半歩先をシリウスさんが歩きだした。
握られた手が、やけに熱い。
(シリウスさんの手、すごく大きい)
(……心臓、うるさい)
それでもこの手を離したくはなくて、私は繋いだ手に、こわごわ力を込めた。
その時――
きゃ!?
ドンッと背中に誰かがぶつかり、身体が揺らぐ。
とっさに踏みとどまるけれど、ガクッと足元が沈んだ。
(あ、やっちゃった……!)
おい、大丈夫か
はい……。ただ、ヒールが折れちゃったみたいで
そういうのは大丈夫とは言えねえな
少し我慢しろ
え? ……わ!?
ふわりと横抱きにされ、言葉を失う。
非常事態だ、許せよ。人波抜けるまでだから
しがみついてろ
頭が真っ白で、頷くのがやっとだ。
私を近くのベンチに座らせたあと、シリウスさんは近くの靴屋に靴を買いに走ってくれて……
戻ってくると、正面にしゃがんで、私の足に履かせてくれた。
サイズ、ちょっとでかかったか
いえ、平気です。本当にありがとうございます……!
いや、間に合わせで悪いな。ちゃんとしたやつはまた今度
何言ってるんですか。私がうっかりしてたせいで、ご迷惑をかけてしまって……
違う、俺のミスだろ
屈んだまま、シリウスさんが私を見上げた。
デート中のエスコートは男の仕事だ
そういうものでしょうか……
そういうもんさ
靴のサイズ、教えてくれるか。今度はピッタリのやつをあんたに贈る
さらりと告げられるひと言ひと言が、私のお腹の底をくすぐる。
(いつもと、目線の高さが逆……)
小さなことがいちいち気になって、私を落ち着かなくさせる。
……シリウスさんって、なんか
ん?
なんていうか、ものすごく、とんでもなく、半端じゃなく……大人、ですよね
なんだそりゃ
シリウスさんの表情が、くしゃっと崩れた。
いつもの微笑とは違い、どこかあどけない。
(子どもみたいに笑うことも、あるんだな)
この人が笑うたび、私の中の何かの目盛りが上がっていく。
笑顔をもっと見たいと思った。
行きつく先は、わからなくても。
シリウスの「繋いどく」。やばいo(`ω´ )o