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イケメン革命 | ロキ=ジェネッタ プレミアストーリー③「カレの噛み跡」

このページではイケメン革命ロキのプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!

今回の「カレの噛み跡」第13話後半のアバター試練プレミアストーリーになるぞ!!

プレミアストーリー「カレの噛み跡」

久々に黒の兵舎に戻ってきた主人公。レイはロキのことも心配し、二人に任務を与えます。

その任務とは黒の軍のみんなにご馳走を作ることで、みんなと話しているうちにロキも元気を取り戻します。

※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。


――みんなでご馳走を食べた後、私はロキに思わず告げた。

ロキってみんなに愛されてるなって思ったの

……そうかな?

首を傾げるロキの声が、少しだけ沈んだ。

(ロキ……?)

ロキはそのまま手を伸ばして――

(……っ)

細い指で、まるで繊細なものを扱うかのように私の頬を包んだ。

俺にはアリスのほうが、よっぽど愛されてるように見える

(え…――?)

長い睫毛が伏せられて、ロキの声に寂寥(せきりょう)が滲んだ。

俺は……愛されてなんかいないから
もし、そう見えるんだとしたら――
アリスが俺のこと、知らないだけだよ

っ…………

(どうしてそんなことを言うの?)

突き放すような言葉に、お腹の底が冷えて……煮え切らない想いが膨れあがる。

……知りたくても、踏み込ませてくれないのはロキでしょ?

本音が、口をついて出た。

…………

するりと、頬に触れていた手が離れていく。

(あ……また、言葉を間違えた)

待って……っ、今のは

そのままロキが消えていってしまうような気がして、私は捕まえようと手を伸ばす。
けれどその時、強い風が吹いて…――

きゃ……

わずかにスカートの裾が舞い上がり、髪が乱される。
風がやむと、ロキの視線は私の膝に向けられていた。

……怪我、したの?

うん……。大したことはないんだけど

(今の風で包帯が見えたのかな。……って、私の怪我のことはどうでもよくて)

ロキ、さっきは……

謝ろうとするけれど、ロキの顔が凍ったように青ざめ強張っていることに気づく。

ロキ……? っ……!

強く腕を引かれて、私は石段の上に座らされた。

急に、なに……?

ロキは答えてくれず、無言のままスカートを上げると膝に巻かれた包帯を取った。

傷になってるね

(あ……)

膝に手をかざしたロキの両目が、赤くなる。

(もしかして、魔法で治そうとしてる……!?)

大丈夫、このくらいなんてことないから……

アリスは黙ってて?

素っ気ない声が聞こえると同時に、ぱあっと魔法の光が暗闇を照らした。
治療してくれながらロキの赤い瞳が、ちらりと私を上目に見る。

(……なんだか、変な感じ)

ロキの仕草はまるで猫がご主人を心配するようでもあるけれど……表情が、まるでない。

私の傷のために……魔力を使わなくてもいいのに

沈黙を破って出た言葉は、よりによってそれだった。

……アリス、俺が魔力持ってるって知ってたんだね
ハールに聞いた?

私はただ、こくりと頷く。

ふぅん、いつの間に……

(隠すようにとハールさんに言われていたわけじゃないけど……)
(ロキは自分の事を、自分以外の人から語られるのを嫌がるような気がする)

傷が治っていくのと同時に、ロキの瞳がだんだんと感情を失っていくのが、少し……怖かった。
辺りに暗闇が戻り、治療が終わる。

ありがとう……

……うん。もう傷なんてつけないで
あと、これ手当てしたのカイルでしょ?

えっ……どうしてわかったの?

こんなに完璧な処置をするのは、カイルだけだよ。それより……
俺以外の男に、触らせないで

っ、治療してくれただけだよ。それに……

(こんなことを言うと、また突き放されてしまうかもしれないけど)

ロキにそんなこと、言われる必要はないと思う

(……恋人でも、ないんだから)

包み隠さず、正直な気持ちを伝えると……

え…――

ロキは私の前に膝をついたまま、傷があった箇所にゆっくりと顔を近づけた。
そして、そっと肌に口づけて――

っ、ぁ……

歯を立ててロキは私の膝に新たな傷を作った。

今、なんで噛んだの……!?

(せっかく、治してくれたのに)

……どうしてだろうね? 俺にもわかんないや

わずかに滲んだ血を、ロキはぺろりと舌でなめとる。

(……っ)

与えられるかすかな痛みとくすぐるような感触が、身体の熱を上げる。

許せないって思ったんだ……全部。アリスの身体に傷がつくことも
俺の知らないところで、他の人と話して……触れられてることも
……俺がつけた傷だけ、覚えてて

っ、そんなの……

無理だと、言いたかった。でもまた縋るような視線に、何も言えなくなる。

(私にも、ロキの気持ちがわからないよ)

……そうだ。今日のお手伝いのご褒美、まだもらってなかったよね

ロキはそう言って、私の腕を引きながら立ち上がった。
改めて向かい合うと、ロキは再び私の頬に手を添える。

っ、キスも甘噛みも、だめだよ

……知ってる

ロキは私を、ただ抱きしめた。
甘えられて、心を許して、けれど時折見せる寂しげな顔や冷たい一面に胸を掻き乱されて……
私はロキと出会ってから、それをずっと繰り返している。

(もう一歩、踏み込みたいって思っているのは……私だけ?)

ねえ、ロキはどうしてこんなに、私を気に入ってくれてるの?

それは出会った当初から抱えていた、疑問だった。

(好きって言わないでなんて、残酷なことをいうくせに)

けれど返ってきた答えは、さらに残酷だった。

俺はアリスが、大好きだからだよ

っ……

その言葉はいつもより、熱を増して胸に届く。
縋るように抱きしめる腕が、私にだけしか聞こえない囁き声が、“好き”という言葉を重くする。

……私は言っちゃいけないのに、ロキは私のことが好きなの?

……そうだよ?
だからアリスは……俺のこと、嫌いにならないで

(今の“好き”はどういう意味なんだろう)

黒の軍や不思議の国のみんながロキに向ける“好き”なのか……
今、自分の胸の中にあるような、どこか切ないような“好き”なのか。

(でも、ロキも自分の気持ちをわからないって言ってた)
(私も……私の気持ちがわからない)

膝の傷も、胸の中も痛かった。

ロキの背中越しに見える月は、日に日に満ちてきている。
胸の中のもどかしい気持ちもだんだん、満ちてきてる。

その気持ちの名前には――満月がくるまで、気づきたくない。


ロキってば、ずるいんだーo(`ω´ )o