家康さんとの両ルート(幸福な恋・情熱の恋)をどちらも恋度MAXで秘密エンドを見ると、特典が貰えるんだよ!
特典は「いくつもの”初めて”を、君と」が読めるのとロングボイスだぞ
いくつもの”初めて”を、君と
その朝、部屋を出た家康は、一番に空を見た。
(よかった。晴れて。●●●がはしゃいで喜びそう)
●●●が家康の御殿で暮らすようになって、ひと月が経った。
今日は久しぶりに、二人で出掛ける予定になっている。
(『今日は御殿の外で待ち合わせしよう』って言ってたよな、●●●)
(同じ部屋で寝起きしてるのに、先に起きてどっか行っちゃうし……何でだろう)
(まあどうせ、なんか企んでるんだろうけど)
出掛ける支度を済ませ玄関へと向かいながら、肩をすくめる。
●●●の企みが楽しみだとは、本人には言わないつもりだ。
(……前に二人で出掛けたの、いつだっけ)
考えてみると、ずいぶん前だ。
ーー顕如との戦いが終わってからも、織田軍の内部では緊張が続いている。
上杉武田軍の兵力が思いのほか強大だったこともあり…
織田軍の武将達は兵の訓練をしたり、傘下の国との連帯を深めたりと、日々奔走していた。
(兵糧確保のためにたくわえを増やす手配も進めなきゃならないし、やることは山積みだ)
(それなのに……)
記憶をたどりながら、ため息が漏れた。
信長に呼び出され不本意な命令を下されたのは、数日前のことだ。
家康、●●●はどうしている
(開口一番に聞くことがそれ…?)
さあ、元気なんじゃないですか
同じ御殿で暮らしていて、なぜ知らん
この頃は忙しくて、あんまり顔合わせてないんで
ほう、そうか
(……顔合わせてないは嘘だけど)
毎晩●●●は、帰りの遅い家康を、起きて待ってくれている。
いつも帰宅して襖を開くと、眠たげに目をこすりながら●●●が振り向き、
決まって、『お帰り』と言って、ふにゃっと笑う。
(俺にとって、あの瞬間は何にも代えがたいくらい大事になってる)
(……なんてことを、信長様に教える義理はないよな)
黙ったままでいると、信長は眉をひそめて家康に命じた。
家康、貴様、丸一日、城へは顔を出すな
……は?どうしてです
謹慎を命じる、と言っている
(謹慎……?)
謹慎しなきゃならないようなことをした覚え、ないんですけど
俺の命に逆らうなら、この場で殺す
(っ…………)
しばらく睨み合いが続いたあと、家康は折れて肩をすくめた。
−−わかりました。命令を聞き入れます。
ですが、理由くらい教えてくれてもいいんじゃないですか
貴様の働きぶりの能率を、上げるためだ
は……?
つまり……休暇を取って、英気を養えってことですか?
それだけではない。●●●に、構ってやれ
(え……)
俺の元から連れ出した女を放っておくとは、言語道断だ
責任を持って甘やかせ
(なんだよ、それ……)
これは、貴様の仕事ぶりを良くするための策でもある
●●●の話を振ると、貴様は目に見えて浮き立った顔になる
(っ……そうなのか?)
●●●とともに一日過ごせば、翌日はよりいっそう、働きが増すと思ってな
(…………くそ。否定できない)
これが、貴様を謹慎させる理由だ
日付は追って沙汰する。当日は、俺の前に決して顔を出すな
(長い付き合いだけど、あの人はいつ何を言いだすかわかんないな、ほんと)
下駄を履きながら、またため息が漏れた。
(ま、仕方ないから今日一日、存分謹慎するか。たまには英気を養うのも大事だし)
(あの言い方はどうかと思うけど、信長様には感謝しないとな、一応)
——(場面転換)
待ち合わせ場所にいるはずの●●●を想い、心が次第に浮き立っていた。
待ち合わせをした露店の前へ足を向けると…
(あ、いた)
人ごみの中に、すぐ●●●を見つけた。
(こんなに人が大勢いるのに、目が変になったみたいだな)
薄墨の景色の中で●●●だけが、色がついているように、くっきり見える。
そわそわしながら、そばへ歩み寄る。
声をかける前に●●●も気付いて、駆け寄って来た。
家康!こっちだよ
笑顔で走ってきた恋人を見つめ、はっとする。
(あれ、この着物って……)
華やかな黄の着物は、いつか自分が●●●に贈った反物で作られていた。
(●●●が着ると、すごく映えるな……)
どうしたの?ぼんやりして
……!
……別に、何でもない
あんたが、今日は一段とはしゃいでるなって思っただけ
(…………嘘)
(ほんとは、あんたに見惚れてた。……言わないけど)
天邪鬼な性分は、いまだに直っていない。
●●●は家康の葛藤には気づかず、にっこり微笑んだ。
はしゃいでもいいでしょ。久々のデートなんだから
(でーと?)
何、でーとって
あ、ええっと……好きな人と二人で、出掛けること
ふうん。変な響きだね
そんなことを言い合いながら、二人並んで歩き出す。
(好きな人、か)
何気なく呟かれた言葉は、しみじみと胸を温めた。
(そういえば……)
あんたとこうしてデートするの、初めてだね
(無理やり連れ出したりとか、寄り道とかはあったけど)
うん。だから楽しみにしてたんだ
デートらしくしたくて、待ち合わせしようって頼んだの
そんな理由で、わざわざ?
う、うん。支度も、あったし……
(支度って、身支度のことだよな)
(俺に見せるために、この着物をまとって、着飾ってくれたってことかな
照れくさそうに俯く●●●を見て、胸がざわついた。
(●●●って、ほんとに……)
ごめん、面倒だった……?
……別に。あんたが可愛いって思ってただけ
え……
●●●の頬が、ぱっと染まる。
(また、照れてる)
(俺もだけど)
……ほら、いいからさっさと行くよ
照れくささを誤魔化し、手のひらを差し伸べる。
●●●は花が咲いたように笑って、家康の手を取った。
(今日は良い天気だし、あそこへ出掛けるのに、ちょうどいい)
晴れ渡る空を見上げ、家康は湖の方へと足を向けた。
(●●●が、喜んでくれたらいいんだけど)
わぁ……、綺麗だね
櫂(かい)を手に舟をゆっくりと漕ぎながら、家康は●●●を見つめ目を細めた。
(よかった、●●●が単純で。この程度ですごく喜んでる)
あんまり身体乗りだすと、落っこちるよ
うん…。あ、家康、魚が見える!すごく透き通ってるね、この水
(聞いてんのかな、この子はもう)
言っとくけど、この湖の魚、凶暴で有名なんだよ
凶暴……?
あんたみたいに、舟から身を乗り出すでしょ?そしたら…
水面下に潜んでた魚が飛び出して、鋭い牙で鼻に食いつくんだ
え!?
ぎょっとしたように、●●●が身体を反らす。
その勢いで、小舟が大きく傾いだ。
(わっ)
きゃ……っ
水が飛び跳ね、ふたりの上にキラキラ雫が降り注ぐ。
髪を少し濡らして、家康は肩をすくめた。
……慌て過ぎ
ご、ごめん!でも鼻が……っ
嘘だよ
嘘……?
こんなのどかな湖で、魚が人間の鼻に噛みつくわけないでしょ
(ほんと、単純)
……意地悪!
騙されるあんたが悪い
しばらくそのまま睨み合ったあと…
(何やってんだろ、俺達)
おかしくなって、ふたり同時に笑いだした。
ふふ、まんまと騙されちゃった
家康の嘘、良く考えたら可愛いのに
可愛いのは、その嘘に簡単に引っかかる●●●
言い合いながら、笑みが次々に溢れた。
陽ざしが、●●●の髪と、髪を飾る水滴を輝かせている。
(……なんだろう、これ)
●●●がいるだけで、目に映る景色が隅から隅まで、美しくて、眩しい。
(ああ、そっか)
(幸せって……こういうことか
ねえ、家康
ん……?
連れて来てくれて、ありがとう。すごく嬉しい
初めて来たけど、素敵な場所だね
●●●が口元をほころばせて、満面の笑みを浮かべた。
(●●●……)
風に煽られなびく髪の一筋一筋さえ、綺麗だ。
(なんでかな。泣きそうだ、なんか)
(これも、幸せっていうのかな)
(泣きそうなのに……この感情が、もっと欲しい)
(●●●と一緒に、もっとたくさん、感じたい)
熱いものが胸を浸して、櫂を操る手を止める。
家康……?どうしたの?
……あんたといると、俺はすごく欲張りになる
え……?
●●●を真っすぐに見つめながら、溢れた想いが口をついた。
あんたがしたことないこと、感じたことない気持ち、見たことのない景色…
全部、俺が見せてあげたい
家康……
(あんたが笑ってくれるなら、あんたが喜んでくれるなら……)
これからあんたがする初めては、全部俺と一緒がいい
……いいよね
声もなく聞き入る●●●の頬が、いつの間にか色づいている。
●●●の初めて、全部、俺にちょうだい
っ……うん
頷く●●●の瞳が、少し潤んで光った。
見つめ合いながら、ふたりで乗り越えて来た時間が脳裏を駆け巡る。
(色々、あったね)
(きっと、これからもある)
(でも、これだけは誓う。もう二度と●●●を離さない)
不意に、今すぐ●●●を抱きしめたくて堪らなくなった。
小舟の上で、向かい合う●●●を抱き寄せるのは少し難儀だ。
……そろそろ岸に戻るよ
本音を隠し、できる限りさりげなく告げ、櫂を握る。
あ、私も漕ぐよ、代わって?
いいよ、別に。結構、力いるし、あんたの袖、舟底に擦りそうだし
でも…
頑張って仕立てた着物が汚れるでしょ。せっかく似合ってるんだから、大人しくしてなよ
え……っ、気付いてくれてたの?
(あ……)
(あー………)
そわそわしながら顔を覗きこまれ、観念するしかなくなった。
(くそ。言う気、なかったのに)
っ……悪い?気付いて当たり前でしょ、そんなの
悪くない、嬉しい
そっけない言葉への返事は、満面の笑みだ。
(ああ、もう!)
(あんたは、ほんとに……っ)
岸まで待てずに、櫂を放り出す。
●●●の腕を掴んで、ぐいっと引き寄せた。
あ……っ
揺れる小舟の上で、●●●を強く抱きしめる。
●●●は何度か瞬きしたあと、気恥ずかしそうに微笑んだ。
……ふふ、びっくりした
なんで、そんなに……可愛いの
え……。ええっと……ありがとう
別に褒めてないから。ただの事実だから
っ……うん、ありがとう
(だから、ありがとうっていう必要ないのに)
わからずや
囁くと、●●●がまた照れたように笑う。
あんたがそんなだから、俺は……
一生、あんたを、愛さずにいられない
ため息まじりに囁くと、掠れた声が胸元で響いた。
そんなの、私だって、同じだよ
家康が、好きで好きで大好きで、堪らないの
(●●●……)
焦燥に似た愛しさが胸に満ちて、唇を重ねる。
ん……っ
腕の中でぴくんと震えた後、●●●は想いを返すように、家康の背中を抱きしめ返した。
(愛してる、●●●)
(ずっと、離さない)
甘いキスを繰り返し、小舟がゆらゆら、穏やかに揺れる。
でーとも湖上の口づけも、生涯をかけた愛も、二人にとって全てが初めてで、鮮やかだ。
目もくらむようなこの幸せは、二人でいる限り、
揺るぎなく永遠に続いていくーー家康はそう、確信した。
「恋文」が「ラブレター」になっているのもいいよね♪
特典はさらにあるぞ!
両ルート恋度MAX特典ボイス
「……あんたといると、俺はすごく欲張りになる
あんたがしたことないこと、
感じたことない気持ち、
見たことのない景色…
全部、俺が見せてあげたい
これからあんたがする初めては、
全部俺と一緒がいい
……いいよね
主人公の初めて、全部、
俺にちょうだい」