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イケメン戦国 | 武田信玄プレミアストーリー②「歪な月、歪な関係」

このページではイケメン戦国信玄のプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!

今回の「歪な月、歪な関係」第六話中盤の恋の試練プレミアストーリーになるぞ!!

プレミアストーリー「歪な月、歪な関係」

織田軍との合戦の最中、逃げ出そうとした主人公。それが失敗し、敵軍に襲われそうなところを信玄に助けられます

戦が終わった夜、信玄と話をする約束をする主人公

※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。


夜の帳が下りた頃……信玄様が私の部屋を訪れた。

こんばんは、姫君

こんばんは。……どうぞ、お入りください

少し緊張しながら、声をかける。

ああ。月と君を、心ゆくまで愛でさせてもらおうか

信玄様は笑みを浮かべ、畳に腰を下ろした。

(さっそく、ぐいぐい来るな……)

あ、待って。その前に、怪我の具合を、見せてください

怪我?

簡単な塗り薬を作ったから、使わせてください

……わざわざ、俺のために用意したのか?

信玄様は意外そうに目を瞬かせた。

はい。このくらいのことはさせてください

…わかった。じゃあ、お願いするとしよう

私がそばに膝をつくと、信玄様は着物の袖をまくり、肩を見せる。

(男らしい腕だな…)

自分の身体とは明らかに違うたくましさに、思わずドキリとする。

(戦場で手当てした時は、夢中だったから、あまり意識しなかったけど……)

努めて気にしないようにしながら、傷口に巻かれている布を外す。

(化膿はしていないみたい。でも……)

まだ痛々しく残る傷痕を見て、きゅっと唇を噛んだ。

痛かった、ですよね

どうってことない。ただのかすり傷だ
君を失う方が、ずっと心が痛む

また、そういうことを……

(私を助けたせいで怪我したのに、一言も責めないんだよね)

いつも通りの軽口を叩く信玄様に切なくなりながら、
傷口を濡らした手拭いでそっと拭き、薬を塗った。

はい、終わりました

ありがとう。それにしても……
この部屋で、君が俺に近付いて触れてくれるなんて、感無量だな

最初に月見をした時は、駆け引きを使って、君を俺の側へ呼び寄せたのに

あ……

君が自分の足で、俺の領土に入って座ってくれたら、どんな質問でもひとつだけ答えよう


…おいで。大人の恋の駆け引きを、君に教えよう

忘れられない夜の記憶が鮮やかに甦り、一瞬にして肌が火照る。

あの時と変わらず、俺の領土は畳一畳か?

……っ

(なんて、答えたらいいの……?)

そんなに困った顔をしなくてもいい。今夜も俺の領土はここから始めよう

戸惑う私に笑いかけ、信玄様は立ち上がって障子を開けた。

あいにくと、今宵の月は、満月じゃないが

(本当だ……)

暗い空には、欠けた形の月が冴え冴えと浮かんでいた。

……でも、綺麗です

その不完全な月が今の自分の心には相応しい気がして、不思議と心に染みた。

そうだな。――綺麗だ、とても

まっすぐに私を見つめた信玄様が、甘く囁く。

(っ…月のことを、言ってるんだよね)

歪(いびつ)な月を愛でるのも、君となら一興だ
灯りを消してくれるか、姫君

っ…はい…

(あの夜と、同じだ…)

誘うような信玄様の口調に胸を騒がせながら、私は行燈を消す。
訪れた暗闇の中で、淡い月の光が部屋に満ちる。

……今夜も、あの時の駆け引きは、有効ですか?

んー?

信玄様の座ってる畳一畳の中に私が入ったら、なんでも答えてくれるって……

少し離れたところに座った信玄様が月を見上げながら、口を開いた。

好奇心がすぎると、火傷するぞ、姫君

好奇心なんかじゃ、ないです。あなたが、全然教えてくれないから……

(これしか、方法が思いつかないだけ)

俺が思うに、男女の機敏ってやつは戦と同じだ

え……?

信玄様の瞳の色が深まり、私の視線を絡め取った。

情報を集め、駆け引きを行い、相手の心の中に領土を広げていき……最後には征服する
君は俺の領土に入り込んで、情報を手に入れたあとは、どうする気だ?

どうするって……

(目が、逸らせない)

君に征服されるなら俺は本望だが――君には、俺に征服される覚悟があるのか

っ……私は、そんなつもりじゃ……

(前よりもずっと信玄様のことが知りたくて……だからこそ怖い)
(このまま近付けば、本当に心の領土を奪われてしまいそうで)
(でも……)

春日山城にさらわれて最初の頃は、信玄様のことを、ただ警戒してました

今は違うのか?

今だって信玄様は謎が多いけど、単純に敵だなんて思えなくなりました
だから、征服するためじゃなく、信じるために……あなたの情報をください

意を決して放った言葉は、情けなくも震えていた。

……
悪い子だ。そんな目で男を見るのは…良くない
手加減できなくなるだろう

(……あっ)

身じろぎもできない私に、信玄様は距離を詰め――いともたやすく領土を侵略する。

信玄、様……なんで……

悪いな。俺は君よりも少し大人で、嘘つきなんだ

信玄様は私の手首を掴み、笑った。

や……

手首に唇を押し当てられ、甘い痺れが走る。

(熱、い……)

皮膚の薄い部分をなぞるように唇は静かに滑り、艶めいた余韻を残して離れた。

そんな顔をしてたら、征服してくれって言ってるようなものだ

っ…違います…

違わない。嘘だと思うなら、俺の目を見てみるんだな
君の顔が、映ってるだろ

(言うこと聞いちゃだめ、なのに)

抗えない引力に吸い寄せられるように、強い光を宿した目を見つめると、
そこに映る私はひどく頼りない顔をしていた。

……やれやれ、君を笑わせるって宣言したのに、ほど遠そうだな

信玄様はゆっくりと私から身体を離す。

これ以上、ここにいると理性が持ちそうにない。そろそろお暇(いとま)しよう
おやすみ、俺の天女

(……っ)

髪を撫でた信玄様の手が離れ、去っていくのを、私は呆然として見つめていた。


これは信長様の焦らしプレイにちょっと似てる。だけどこっちの方が大人♡