幸村さんとの両ルート(幸福な恋・情熱の恋)をどちらも恋度MAXで秘密エンドを見ると、特典が貰えるんだよ!
特典は「相変わらずのふたり」が読めるのとロングボイスだぞ
相変わらずのふたり
(あー……くそ、どうしてこんなことになったんだ)
幸村は刀に手をかけ、静まり返った森の中を進んだ。
月が南の空にかかり、夜道はまぶしい。
(本当なら今頃●●●とのんびりメシ食ってるはずだったのに)
(どーしてひとりでこんな辛気くさい森ん中うろうろしてなきゃなんねーんだ)
(せっかくの休日が台無しじゃねーか)
目を凝らして、落ち葉に隠れた足跡をたどる。
(覚悟してろよ、●●●)
一本の団子が、この災難の全ての始まりだった。
お前は全っ然わかってねえ!
幸村の方こそ、おかしいんじゃないの!?
久しぶりの休日に甘味を食べに来たはずが、些細なことから口論になり…
幸村は、領地である上田城城下の茶屋で、●●●と並んで睨み合っていた。
幸村様、●●●様、落ち着いてください…っ
あ、大丈夫です。いつものことなので
そばでは、護衛として同行していた佐助が、おろおろする店主をしずめている。
(いつものことじゃねえっつーの。今日という今日は譲れねえ)
栗団子がこの店で一番美味いに決まってんだろ。草餅なんて邪道だバーカ
美味しいじゃない、草餅の方が!栗団子が一番なんてどうかしてると思う
あ?もっかい言ってみろ、●●●
ど、う、か、し、て、る
(腹立つなー…こいつ…っ)
いーっと睨んでみせる●●●は、小憎らしいくせに、とても可愛い。
誰にも見せたくないくらいに、今すぐ口づけたいくらいに、可愛い。
(どうかしてんのはお前だろ…。なんでこんな時まで可愛いんだよ)
(っ……だめだ、今日はこの程度で折れてやんねーぞ)
んだよ、その顔。ブス
……!
っ……あんまりだよ
(あ、まずい)
●●●の声が、かすかに震える。
待て●●●、今のは…っ
もう知らない。幸村なんて……っ、一生栗団子だけ食べてればいい!
(いや、そりゃ無茶だろ…!)
立ち上がって、●●●が店を駆けだしていく。
(あー……またやっちまった)
照れくさくて口が滑る自分の悪癖を心の中で呪う。
記録更新
は?何の
犬も食わないふたりの喧嘩。俺が見た限り今日が記念すべき百回目だ
お前、いちいち数えてたのかよ
今のは冗談
(……こいつ相手だと率直に腹立つな)
大丈夫でしょうか、●●●様…
店主「このところ城下に人さらいが出ると噂が立ってます。追いかけた方が…
言われなくてもそうする。騒がしくして悪かったな
店主にてきぱきと支払いをして、残った栗団子をほおばり椅子を立つ。
仲直りできるといいんですがねえ…
ご心配なく。あのふたり、喧嘩するのが趣味なので
(言ってろよ)
背中から聞こえてきた声を聞き流し、幸村は●●●を追いかけた。
(あ、いた)
おい、●●●
遠くから声をかけると、●●●の肩がぴくんと跳ねる。
追いかけてこないでっ
断る
幸村なんて……嫌い
ダメ、嫌うな
●●●が足を止め、幸村の方へと振り向く。
唇を噛み眉を吊り上げているけれど、頬が赤く染まっている。
(くそ……。これはこれで可愛いじゃねーか)
と思うものの、やはり口には出せず、つられて仏頂面になる。
戻って来い。草餅のこと、今後は見直してやってもいいから
なんで上から目線なの…っ
●●●はまた背を向けて、先へと歩いて行ってしまう。
(あー……またしくじった)
●●●の機嫌を決定的に損ねた理由は、無神経な自分でもさすがにわかる。
ブスなんて嘘だ、悪かった、照れてただけだ、お前はこの世で誰より可愛い…
そんな本音をするする言葉に出来れば苦労はしない。
(信玄様ならこういうの、得意なんだろうけど…)
(っ……こんな往来で言えるかよ)
おや、幸村様と●●●様じゃないか?
ふたりで散歩とは仲が睦まじいことで…
町人達から注がれる温かい眼差しが今日はやたらと痛い。
(居たたまれねえ……)
●●●、俺は先に帰るからな!
顔が熱くなるのを自覚して、幸村は背を向けた。
――…それが、今日の昼のことだ。
(こんなことになるなら無理やりにでも追いかけて捕まえとけばよかった)
ざくざくと落ち葉を踏み、夜の森を進んでいく。
やがて行く手に、ひと目を避けるように灯る明かりが見えた。
(……あそこか)
(待ってろよ、●●●。すぐ行くから)
――…栗団子と草餅のせいで一大事に陥ったとわかったのは、数刻前だ。
●●●がさらわれた、だと……?
ああ。これを見てくれ
城に届けられた文を、佐助は幸村に開いて見せた。
(『●●●を返して欲しくば身代金を用意しろ』…?)
金百両という身代金の金額を見て、幸村は目をつり上げた。
(ふざけたこと書きやがって……)
のたうつような字で書かれた文を、くしゃっと握りつぶす。
……犯人は城下で噂になってる人さらいか
間違いない。恐らく、上田に最近流れてきた輩(やから)だろう
幸村と●●●さんのこと、全然わかってないみたいだから
動じる様子もなく、どこか同情するように佐助が肩をすくめてみせた。
で、どうする?
●●●を迎えに行く。人さらいを取り締まるついでにな
俺も出ようか?
いや、ひとりで足りるだろ。あ、仕留めた賊の回収、任せていいか?
了解
当然のようにひとりで行くつもりでいる城主に、佐助もごくあっさりと頷いた。
(なんて日だ、ったく)
ふつふつ怒りが湧くのを感じながら、幸村は手早く支度をし…
そして今、山小屋の前で足を止めた。
(ここか、賊の根城は)
中から数人の男の声と、●●●の声が漏れ聞こえてくる。
……というわけなので、もう家に帰して下さい
さっきから生意気な口開きやがって。帰すわけねえだろ!
でも、このままだとあなた達が大変なことになりますよ?
(……?何の話してんだあいつ)
人質になっているくせに、●●●の声はやけに落ち着いている。
お姫さん、大変なことってなんだ、一体
幸村がもうすぐここに着いて、あなた達をやっつけます
笑わせてくれるぜ。このアジトがそう簡単にバレるわけねえ
うーん、それも有能な忍者がすぐに調べをつけると思うんですよね…
(わかってんじゃねーか、●●●)
思案げな●●●の声に、内心うんうんと頷く。
さっきから何なんだ、お前!ちょっとは怯えろよ
あっ……そうですね、すみません。頑張ります
なめてんのか!だいたいな、幸村なんて青二才、俺たちの刀にかかれば造作もねえ
(あ…?)
は…?
おうよ。ここに乗り込んで来たとしても返り討ちにしてやるぜ
(へーえ、少しは骨がありそうじゃねえか)
幸村が束(つか)に手をかけた時、山小屋の中から大きな声が響いた。
バカにしないで。幸村が負けるわけないでしょう!
(……!)
はあ?
幸村はこの世で一番強くて、かっこいい人なんだから!
(っ……何いってんだ、あいつ)
(……せいぜい期待に応えねえとな)
にやりと笑い、幸村は腰に携えた村正
(むらまさ)
(よっ…と)
扉を斬りつけ、足で蹴破った。
どーも。この世で一番強くてかっこいい幸村です
幸村……!
な、なんだと!?
人さらい達は、顔を青ざめさせバタバタと刀を構えた。
●●●は小屋の隅で縛られながらも、目を輝かせている。
(すげーいい笑顔)
(他の男に見せんの、もったいねえ)
刀を構え、幸村は人さらい達を睨み回した。
お前ら、覚悟は出来てんだろうな?
っ……覚悟だと?てめえ、まさかひとりで乗り込んできたのか?
女に良いとこ見せたかったってとこか?城主のくせに強がってやがる
阿呆な野郎だ。後悔させてやるぜ
(阿呆なのはお前らだろうが)
ののしりを聞き流し、城に届いた脅迫状を人さらいの前にひらりと落とす。
ふざけた文を送りつけてんじゃねえぞ、お前ら
……っ!
鬼のような幸村の形相に人さらい達がびくっと身を縮める。
くしゃ、と文を踏み潰し、幸村の怒声が小屋に響いた。
こんな良い女が、たったの百両で買えるわけねーだろうが!
はした金要求してんじゃねえぞ!
は……?
な、何言ってるの、幸村…
きょとんとする人さらいの後ろで、●●●の頬が真っ赤に染まる。
(っ……そういう反応すんなよ、こっちが照れる)
別に……俺は、思ってること言っただけだけど
本当に……?
●●●が瞳を嬉しそうに瞬かせていて、愛しさが胸に募る。
(今度は素直にちゃんと言おう)
……本当に決まってるだろ
いつもそう思ってる
幸村……
見つめ合ううちに、●●●の口元がほころんでいく。
(よかった、機嫌直ったみてえだな)
安堵が胸に広がったその時、
俺達のこと無視してんじゃねえよ!
何なんだよ、お前ら!?
(ああ、忘れてた)
怒りに震える人さらい達に、幸村は視線を戻した。
――…悪いけどお前らに構ってる暇はねえんだ
俺の女に手ぇ出したこと、獄中でたっぷり反省してもらうぜ
幸村の手にする村正が宙を斬り、人さらい達の刀を一瞬にして弾き飛ばす。
ぐ……っ!?
貴重な●●●との休日を邪魔した者達を、返す刀で峰打ちにして床に転がした。
(大口たたいてたわりにはあっけねーな)
全員気を失ったのを確かめて、村正を鞘(さや)に収める。
それから幸村は●●●の縄を素早く解き…
じゃ、帰るぞ
うん…!
すっかり機嫌が直った●●●を、両腕でふわりと抱き上げた。
待たせて悪かった。怪我ねえか?
うん、平気。……せっかくの休みなのに働かせてごめん。不注意だった
いや…。俺の方こそ怖い目に遭わせて、ごめん
ううん。来てくれるってわかってたから
両腕に●●●を抱いたまま、夜の森を歩いていく。
行きはわびしかった森が、なぜか明るんで見えた。
(にしても……)
●●●の機嫌は直ったけれど、言わなければならないひと言を言ってない。
(照れくさいけど、言わなきゃな)
(初めから言えてりゃこんなことにもならなかった)
足を止め、腕の中の●●●をじっと見つめる。
……あのな、嘘だから
え?
ブスって言ったの、嘘
っ……
見開かれた●●●の瞳に月が映って、まぶしさが増す。
ほんとは……あの時、すげー可愛いと思ってた
っ…今さらお世辞言ってくれなくてももう怒ってないよ
私も……栗団子のこと、ひどく言ってごめんね
気恥ずかしそうに、●●●が笑う。
(わかってねーな、こいつ)
念押しのために、気恥ずかしさを押し込めて告げる。
別にお世辞じゃねえから
お前はな、どんな顔してようが可愛いんだよ
えっ?ええっと、それじゃ……あくびしてても?
おー。うにゃうにゃ寝言いっててもな
(俺には、お前の全部が可愛い)
笑い合ってようやく仲直りを終える。……何度目かはもう忘れた。
喧嘩したせいで、せっかくのお休み台無しになっちゃったね…
●●●が少ししょんぼりした顔になる。
いつもこうだね。喧嘩する運命なのかな、私達…
運命、か…。たしかにな
(毎日のように喧嘩すんのも、そのたびに仲直りすんのも…)
(そんな相性なのに、俺達が出逢って、恋したのも、)
(……全部、運命だ)
一日の終わりに、こうして腕の中に●●●がいる。
ふたりの休日を見舞った災難は、これで全部帳消しになった。
そのことでさえ運命だと思える。
運命なんて信じてなかったけど、あるんだな
え?
お前に出逢ってわかった
この先ずっと離さねえから
運命だから、諦めろ
耳まで赤くして、●●●が答える代わりに笑った。
●●●を抱き寄せ、唇を重ねる。
ん……っ
口づけを深めると、●●●がはかない吐息をこぼす。
(あー……くそ)
(やっぱ、すげー可愛い)
明日もきっと●●●と喧嘩して、そのあときっと、仲直りする。
そんな毎日をふたりで繰り返すことが多分、幸せということなのだろうと、幸村は思った。
月明かりの下、最愛の人の甘い唇にどこまでも溺れながら。
両ルート恋度MAX特典ボイス
運命なんて信じてなかったけどあるんだな
お前に出会ってわかった
この先ずっと離さねえから