このページではイケメン戦国政宗のプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!
今回の「一線を越えて」は第八話中盤の恋の試練プレミアストーリーになるぞ!!
プレミアストーリー「一線を越えて」
上杉軍との決戦を控えた前夜。突然、兵士たちからうめき声と叫び声が聞こえます。
どうやら飲み水に毒が仕込まれていたよう。さらに陣営に間者が現れます。
※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。
ぎゅっと閉じていた瞼を開ける。
(――え)
目の前に、血に濡れた肩が見えた。
……っ
……政、宗……?
う……ぐ、っ……
政宗が投げつけたのか、刀が、黒装束の男の身体を貫いている。
貴様、伊達政宗か……っ!
(あっ!)
看護者達を襲っていたもう一人の男が、刀を抜き駆け込んでくる。
……遅い
日本目の刀を抜き、鮮やかに敵の刃をさばくと、政宗はその男の首筋に切っ先を突きつけた。
……っ、俺たち二人を殺しても、まだ安堵はできんぞ……!
残念だが、お前で最後だ
この辺りをうろちょろしてたお仲間は、今頃俺の部下が全員始末してる頃だ
政宗の無慈悲な刃が、その男も切り伏せる。
敵の頭巾をはぐと、ざんばら髪があらわになった。
元坊主。……ってことは、顕如の横やりか。胸糞悪いことしやがって
そう吐き捨てると、政宗はふらつく足取りで森の奥へと分け入っていく。
そこでようやく、私は我にかえった。
っ、政宗……!どこに行くの……っ?
待って……
……っ
ひと目のないところまで移動すると、突然、政宗がその場にくずおれた。
政宗……!
とっさに掛け寄って、政宗の身体を抱きとめる。
政宗の右肩から流れる血が、雨と混じり私の着物にじわりと滲んだ。
(血が……こんなに……)
あー、くそ……銃弾が貫通してるのが幸いだな
政宗は木に身体をもたれさせ、苦しげに呼吸を繰り返している。
は、早く手当、しなきゃ……っ、待ってて!
救護用の天幕に駆け込んで、急いで消毒用の酒と綺麗な布を持って来る。
まずは、血、止めないと……!
●●●……、●●●、落ち着け
混乱したまま、傷口を押さえる私を、政宗がいつもよりずっと穏やかな声でなだめてくる。
(……っ、どうして)
向けられた笑顔が苦しくて、視界がかすかに歪む。
はっきり言っておくが
俺は伊達家当主として、家臣団の将として、それが必要とあれば
たとえお前だとしても――殺す
涙をこらえながら、見ているだけで痛々しい傷口に、止血の布を巻く。
どうして、かばったりしたの……、まだ、戦も終わってないのに
怪我してまで私をかばう必要なんて、なかったでしょ……?
……そうだな。本来なら……そのつもりだったんだけどな
お前が死ぬと思ったら、身体が勝手に動いてた
(身体が、勝手に……って)
もしお前が死んだら、俺がお前の死を誇ってやる
(……っ、嘘つき……)
(私が死んだ時の話、平然としてたじゃない……っ)
注がれる眼差しがやけにあたたかくて、堪えられず視界がぼやけていく。
ここでもし死んじゃったら、政宗の使命はどうなるの……
立派な国、つくるんじゃないの……っ?
なに怒ってんだよ、命の恩人に。この程度で、俺が死ぬかよ
そう言って、政宗が優しく私の頬を撫でる。
泣くな
その手が、言葉と裏腹に恐ろしく冷たくて、ますます涙があふれてきた。
……っごめん。ごめん、なさい……
頬に触れる手に自分の手を重ねて、ぎゅっと握りしめる。
(……私のせいだ)
何も、できなかった……
初陣(ういじん)なんて、そんなもんだろ
鉄砲かついで戦おうとしただけ、上出来だ
(……違う。戦おうとなんてしてない)
(あの時、私は心の中で、殺したくないって願った)
(敵であっても、殺せないって……)
止血の布をぎゅっと縛って離れると、政宗の懐にあった何かが、
指先に引っかかって、ぱさりと落ちた。
(あ、これ……私が描いた、絵だ)
……悪い、血で汚れたな
ううん、いい……いいの
政宗との思い出が詰まった絵が、赤い血で濡れていた。
その不似合いな光景が、私の考えの甘さを突きつけているように見えた。
(さっき私が敵を撃てていたら……政宗が私を守る必要もなかった)
(……こんなことには、ならなかったんだ)
馬鹿、もう泣くな
政宗が、片手でそっと私の頭を引き寄せる。
助けたお前に泣かれてちゃ、格好つかないだろうが
……、っ……
なだめるように囁かれたあと、目元に唇が寄せられる。
柔らかい感触が涙の跡をぬぐい、さらに胸の奥がぎゅっと軋んだ。
(……唇、冷たい)
その場で膝を立たせ、そっと政宗の頭を自分の胸に引き寄せる。
少しでも暖められるようにと、私は抱きすくめるように腕に力を込めた。
泣くなって言ってんのに、お前は……
泣いて、ない……っ
呆れ笑いをこぼす政宗に、涙声をかえす。
冷えていく体温と、地面に広がる真っ赤な血に、
政宗を失う恐怖が膨らんで、ぎゅっと、抱き締める腕に力を込めた。
(死なないで)
胸が張り裂けそうなくらい、私の心が、そう叫んでいた。
……っ、う……
ふいに政宗が、怪我した右腕を持ち上げて、私の身体を抱き返した。
だめだよ、動いたら…っ
うるせ。じっとしてろ
私の首筋に顔をうずめて、政宗が静かにつぶやく。
……お前の心臓の音、落ち着く
(っ……)
あたたかい吐息が肌に触れて、政宗が生きていることを、教えてくれる。
(政宗の、心臓の音も、ちゃんと聞こえる……)
しばらくそうして寄り添っていると、突然、政宗がしっかりとした口調で命じた。
――●●●、この傷のこと、絶対に黙ってろよ
え……っ、どうして?
夜の間は互いに一時休戦の状態だが、いつまた交戦状態になるかわからない
大将がぐらつくのが、一番士気が下がる
でも、さすがに、こんな怪我じゃ戦えないでしょ……?
戦場に出なかったら、秘密にしても気づかれるんじゃ……
何言ってんだ。この程度の怪我で弱ってたら、伊達の名折れだ
(……このまま、戦場に出るってこと?)
光を失ってない政宗の眼に、焦りから背筋がぞくりと冷えた。
あ、危ないよ!この肩で刀が振るえるの!?
右腕が使えないなら、左腕で戦うだけだ
そんなことしたら、本当に死――
死なない
っ…!
強い語気で否定されて、はっと息を飲む。
腕がちぎれようが、足を折れようが、戦わない理由にはならない
ここで退いたら、もっと大事なものまで失う
……っ
(肩は重症だし、血も足りないはずなのに……)
それでも、政宗の眼に宿る熱い炎は消えていなかった。
その眼差しの美しさに、一瞬、全ての感覚が奪われた。
……わかった。周りには、言わない
素直で結構
……、ん
ぐ、と荒っぽく身体を引き寄せられて、口端に政宗の唇が触れた。
……約束だからな
政宗はそう言って、しっかりとした足取りで立ち上がった。
それとほぼ同時に、森の向こうから大勢の馬の足音が聞こえてくる。
あいつらの声だな。主人公、戻るぞ
っ、うん
政宗の横顔を見つめながら、私は心がある一線を越えたのを感じた。
(この人を守るためなら、今度こそ――)
(私は、引き金を引ける)
鉄砲を持つ主人公のスチルが見てみたい……