このページではイケメン革命ランスロットのプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!
今回の「心、揺れる」は第10話後半のアバター試練プレミアストーリーになるぞ!!
プレミアストーリー「心、揺れる」
赤の軍での軟禁生活にも慣れてきた主人公。徐々に赤の幹部たちとも仲が良くなります。
主人公はヨナと協力してランスロットのために手作りの料理を作って食べてもらうことにしました。
※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。
(……今日のレモンケーキはよく出来たな)
作り立てのレモンケーキを手にランスロット様の私室の前で足を止める。
私室の前に置いて戻ろうとしたその時、突然扉が開き……、
きゃ……っ!
服をぐいっと引っ張られて、部屋の中に引きずり込まれる。
な、なに……?
視線をあげると、目の前に大きな2つの瞳があった。
…………大きな、猫?
猫ではない。ホワイトライオンだ。まだ子どもだがな
(…………え?)
ランスロット様の声がして、声の方に視線を向けると……、
……!
着替えている最中の姿が視界に飛び込んできた。
……っ……、すみません!
慌てて視線を逸らし、赤い絨毯に視線を落とす。
そして、今見た光景を思い出した。
(……左腕にだけ傷が、たくさん)
普段は隠されているランスロット様の左腕には、無数の切り傷があった。
その傷は、古くからあるものに見える。
(……もしかして)
【回想】ーーーーー
そう言えば、昨晩黒の兵士が単身で乗り込んできたんですよね?
まあね、ランスロット様が処罰したけど
牢屋の清掃係が、血で濡れた地面を掃除するのが大変だったって言ってたな
さすが我がキング……
処罰に値する人物は、あっさりご自分の手にかけてしまうとは
この前の物取りも、その前の不法侵入者も……数えたらきりがないな
ーーーーー
あの夜、黒の軍の兵士を助けるために、自分の手を刺した。
きっと、今までも1人逃がすために、1つ怪我を負ってきたのかもしれない。
その事実に、心が掻き乱される。
(……やっぱり、私はこの方がわからない)
そばにいればいるほど、一緒の時間を過ごせば過ごすほど、わからなくなっていく。
何か用か
足音が近くで響いて、顔を上げるとランスロット様が私を見下ろしていた。
あ、あの! これを作ったので、よかったら食べてください
…………毎日毎日、よく飽きぬものだ
ランスロット様の手が、レモンケーキを受け取りそっとテーブルに置いた。
いつもは受け取ってくれただけで嬉しいのに、傷のことが気になって今日は上手く喜べない。
さっきから妙な顔をしているのは、傷を見たせいか?
……っ
お前は感情が全て顔に出る。嘘がつけない娘だ
すみません……
この傷は、そのホワイトライオン……シャインに噛まれてな
隠された傷がある腕から目を離すことができない。
どうした、そんなにじっと見つめて。……触れてみたいのか?
……
(……嘘、ばかりだ)
この方は、誰にも自分の心を触れさせようとしない。
そして、誰かにわかってもらおうなどとは思っていないのだろう。
(…………それでもいい。もう、それでいい)
名前がつけられない強い衝動が込み上げて、
私は傷だらけのランスロット様の左腕を抱きしめた。
……アリス
……ランスロット様。私は、あなたのことがわかりません
そばにいればいるほど、わからなくなる
……
冷たく非道なあなたと、……たまに寂しそうな顔をするあなた、どちらが本物か、私にはわかりません
けど……、わからないままでいい
……?
信じられることは、この瞳に映るものと、自分自身の感情だけだ。
ランスロット様。私は、あなたの言葉よりも、心を信じます
心……、だと?
はい、私は私が思うあなたを、ただ信じます
……っ
まるで獲物を狩る獣のような仕草で、顎を持ち上げられる。
……っ
アリス……お前はどうして易々と信じるなどと口にする
お前にした数々のことを、忘れてはいないだろう……?
覚えています、全部ひとつ残らず
覚えていれば、その様な甘い戯言は言えないはずだが
その瞬間、耳に吐息がかかり……、
(……!)
鈍い痛みが身体を走る。
それとも、身体で思い知るか……?
くすくすと笑う声が途切れては、耳を噛まれ鈍い痛みが走る。
……っ
どうした。まだ足りないようなら……
お前の全てをここで奪っても良いが
……ランスロット様
苦痛に歪むお前の顔を眺めるのも、また一興だからな
ここで私が退いたら、もっとこの方は遠くに行ってしまう。
まるで波がひいていくように、遠くにとおくに行ってしまう気がして、
その冷たい瞳を見つめ返す。
……私は、たとえあなたにどんなことをされても、
さっき口にした言葉を取り下げません
……
目の前の瞳が苛立ちに燃える。
俺を籠絡すれば、己の利になるとでも……?
あなたは、そんなことで動かされる方ではないでしょう?
視線と視線が、ぶつかり合う。
眩しくても、熱くても、目を逸らしたくない。まるで火花のようだ。
先に、その熱から目を逸らしたのは、ランスロット様だった。
お前は、あまりに無垢だ
ーーあまりに無垢で、俺にも、お前が理解できん
……ランスロット様
身体を離したきり、ランスロット様は何も言葉を発さない。
このままここにいても、前にも後ろにも進めない気がして、
私はそっと部屋を出る。
ーーーーー
1人になった部屋で、ランスロットは苦しそうに眉を寄せる。
まだ●●の熱が、腕に残っているようだった。
…………なぜ、心が揺れる
レモンケーキの横で、
部屋に置かれた砂時計の砂はゆっくりゆっくり零れ落ちていた……
危険でアブナイ恋!!ドキドキ!!