このページではイケメン革命エドガーのプレミアストーリーをネタバレしていくよ!!
今回の「優しき悪魔の誘惑」は第4話後半のアバター試練プレミアストーリーになるぞ!!
プレミアストーリー「優しき悪魔の誘惑」
偶然、現代の世界から魔法の国に迷い込んでしまった主人公は、黒の軍のお世話になろうとした矢先、ブランの大事な懐中時計ともども自分の荷物を何者かに奪われてしまいます。
赤のジャックであるエドガーに助けられた主人公はブランに制止される中、赤の兵舎に身を寄せることになります。
最初は黒の軍とは異なる環境に戸惑いを覚える主人公でしたが、だんだんと赤の軍の人々と親しくなっていくのでした。
※主人公の名前を呼ぶ部分は●●●にしています。
……見てしまいましたね、アリス?
薔薇の茂みの陰にうずくまっていたエドガーが、立ち上がって私を隅へ追い詰める。
(わ……!)
白壁に背中がぶつかり、退路をふさがれた。
エドガーが私の顔の真横に手をつき、胸板の中へと閉じ込める。
見たからには、貴女も共犯になってもらいます
(共犯!?)
逆光になって影が落ち、エドガーの表情はよく見えない。
(ここでいったい何を……)
白壁の冷たさが背中に伝わり、ひやりとした時……
で、何色がお好みですか?
(へ……?)
抱えていた紙袋を、エドガーが私の前で広げてみせた。
この中身って、まさか……!
はい、ジェリービーンズです
七色の袋の中身と、悪戯っぽく笑うエドガーを、交互に見つめる。
(ただ、おやつをこっそり食べてただけ……?)
もう、何かと思っちゃったじゃない……!
すみません。貴女があまりにいい反応をするので、つい
悪びれないエドガーの態度に、一気に力が抜けた。
あー、びっくりした。お菓子を食べるのに、どうして隠れる必要があるの?
うーん。強いて言うなら、癖、でしょうか
長い指先がソラマメ型のお菓子をつまみ出し、もてあそぶ。
幼少期に、こういう菓子類を一切禁じられていたもので
ずいぶん厳しいご家庭に育ったんだね……
比較的、そうかもしれません
赤の軍の役職は世襲制なんです。俺は、代々赤のジャックを務める家に生まれました
(なるほど……。赤の軍の偉い人達は、ロンドンでいう貴族みたいなものか)
赤のジャックになるべくして育てられたことに、俺自身、不満も異議もありません。ただ……
こういう身体に悪そうな食べ物だけは、やめられなくて
(子どもの頃から隠れて食べてたってことか)
形のよい唇が開き、黄色のジェリービーンズが放り込まれる。
もぐもぐ口を動かすエドガーは、とっても幸せそうだ。
(ふふ、ずいぶん美味しそうに食べるな。よっぽど好きなんだ)
どうです、おひとつ? 無理にとは言いませんけど
促されて、袋の中身を覗き込む。
ショッキングピンク、パープル、オレンジ……。どれも可愛くて楽しい色だね
貴女もいけるクチですか?
うん! ジャンクなお菓子にはジャンクなお菓子なりの味わい深さがあるよね。私も好きだよ
……賛同を得られたのは、初めてです
今までひとりも? 赤の軍の人たちは、みんな育ちがいいんだね
はい。お陰で、兵舎でお菓子を食べていると白い目で見られて、肩身が狭くて
(それで、中庭の隅で……)
グミ、マシュマロ、綿菓子、フィッシュ&チップスにドーナッツ……
俺の愛する食べ物はどれも、赤の軍の食堂には並ばない品ばかりです
でも、禁じられたり遠ざけられたりすると、余計に欲しくなってしまうんです
すごくよくわかる。苦労してるんだね、エドガー
……変わってますね、貴女って。『身体に悪いからほどほどに』と言われるのが常なのに
うーん、まあ私も食べすぎは良くないとは思うけど
とっても好きなんでしょう? なら仕方ないよ
笑顔で答えると、エドガーの目元もほころんだ。
貴女の答えは予想外のものが多くて、会話をするのが楽しいです
そ、そう?
というわけで、共犯の証にひと口どうぞ?
砂糖の衣(ころも)をまとった桃色のジェリービーンズを1粒、エドガーが指先でつまみ上げる。
当然のように唇の前に差し出され、ドキッとした。
はい、あーん
じ、自分で食べられるよ
ええ、それは知ってます
知ってるなら、手に載せてもらえると……
お断りです
誘うように、エドガーがジェリービーンズを私の鼻先でゆらゆら動かす。
つられて手を伸ばした途端、桃色のソラマメは上へと逃げ、スカッと空振りしてしまった。
(もう、からかって……っ)
ムキになってさらに手を伸ばすけれど、ソラマメは右へ左へ華麗に逃げて捕まらない。
必死になる私を見て、エドガーの笑みは深まっていく。
あーあ、このジェリービーンズ、とびきり美味しいのになあ。アリスにも食べて欲しいなあ
……エドガーって、意外と、意地悪でしょ
意外だなんてそんな。こう見えて俺、意地悪には定評があるんです
(なあに、それ)
自信たっぷりに言い切るから、根負けして吹きだしてしまった。
ふふ、意地悪なだけじゃなくて、意外とお茶目なんだね
それもよく言われます
空っとぼけた答え方がおかしくて、今度は声をあげて笑ってしまう。
隙あり、ですよ
(え? あ……っ)
顎を持ち上げられ、開いた口の中にジェリービーンズが転がり込む。
仕上げのように、エドガーの親指が私の唇をそっと閉ざした。
(平気な顔で、こんなこと……っ)
頬、真っ赤です。次はスカーレットのジェリービーンズを差し上げますね
(もう!)
エドガーの手から袋を奪い、自分でスカーレット色のジェリービーンズをつまみだす。
びっくり顔のエドガーの前で、急いで口に頬張った。
もう一度言いますけど、私は自分で、食べられます!
貴女って……意外と、図太いんですね
それ、褒め言葉じゃないからね
お気に召さなければ訂正します
貴女は、俺が思っていたよりずっと、強い女(ひと)です
無邪気ではあっても、傷つけられて泣き寝入りするタイプじゃないらしい
本格的に気に入っちゃいました、貴女のこと
(え……っ)
当分、退屈せずに済みそうです
エドガーがますます楽しそうに笑うから、やけに視線を惹きつけられて、
『気に入った』というひと言がどういう意味かを、私はうっかり聞きそびれた。
うはあああ、ジェリービーンズ私も食べたい!!(そこかい!!)